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女が見つめる空に、月が四つ神々しく。

無造作に伸ばされた動きのあるメッシュの入った髪の男が柔らかなベッドで悠々とした細いシルエットで座っている。空間は、白で統一されたコンパクトで無個性な棚が幾つか配置され、雑貨や室内植物が点々と並ぶ。薄いピンクがあしらわれた白のカーテン、植物のようなカーブを描く電気スタンド、ショッキングピンクの大きなクッションが乗せられたベッドにふわりとかぶせられた柄のある布団、中蘇芳の円形カーペット、ベッドと向きあったベージュのソファに白の下着姿で腰掛けていた女が、今日ね夜空きれいよ――だが、ちらと視線が女に刺さる――コンビニで買いたいものあるから……まだよく知らない男、部屋に、一人にさせたくないし。閑静。数分後、マンションの一室のドアが開く。シンプルでぴっちりとしたシャツを着た女の髪が風でそよぐ。顔まわりにハイライトがブレンドされていて長い。二人が四つの月に照らされた夜道を歩いている。大橋くん、男にモテそう、フェミニンなとこあって、ハワイに住んでたんでしょ。家はあるからさ観光ついでに遊びにくればいいよ。あともうちょっと職場に慣れないとまとまった休みはとれないかな、ねぇ仕事何してるの。ああ、友達の飲み屋を手伝ってる、オワフから日本に戻ってきてしばらくして、世界が滅びかけてる噂がさ囁かれるようになった、俺はずっと恋人と呼べるような関係を誰かと持ってこなかったから、こうやってきみみたいな人と残された時間を過ごすてゆうのも悪くないとは思うよ。私の名前、柿本よ、覚えて。夜道では誰ともすれ違わない。廃墟を歩いているような感傷。コンビニで物色する女から離れて売られている商品を流し見―― bX ±«¢Hナスdテ «[| ¯@テァテ xt •テォ/[ テセ\テセテ Dテ ¯NツオテカJO テヲR=テゥニ津シ テ BテサEO`¡~$+Mテセu352 ¢^¸テ淌ェ¯テ ¸テ禿 ¡z„<テエeBEV¨テゥ¤テ £ナス~«テーナ適ツオc·Fq²yテクAテコ¿ツェX € jテ テスp3+€„%ツェテシテ芝セテー ·テ ニ脱――女はスリムで小さい薄ピンクのペットボトルをレジへ。二人は部屋に戻るとまたセックスする。初めて会ったとき、男は左手薬指に指輪をし丁寧に磨いていた、まるで他に何にも興味がないかのように。男が醸しだす気配にはどこかしら英語圏の文化の風が吹いていて、なにか夢を追わずに生きていることそれ自体がスタイルとして自然と所有されているように女には見えて、何も持たない(持てない?)さまは私と同じだ、その先にある形をこの人は持っている、女は、そのように興味を抱いただろう。だから、さらっとなされた口説きを受け入れ、その晩のうちにラブホテルへ行ったのだ。それから何度か会い、一緒にいるのは心地いい、とはいえ、彼との未来があるとは思えない、それでもまだ、私自身を解く鍵がちらついて見える、きっとそういう関係だと女は捉えている。それでも、擬似パートナーシップは少しずつ築かれつつある。

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空漠とした

ここでは実際のところ、瓦礫以外に何も見るべき景色はない。空には太陽が二つ、月が二つ、同時に輝き、惑星の滅亡の報せを示している。比喩でなく、人の体が、遥か高度の空から落下しそのまま否応なく地に激突すれば死ぬように、摂理だ。神罰を嘲笑うかのよう。この事態は、数日前に人類が引き起こしたものだ。数多の天変地異が折り重なりおよそ死に瀕し、暴徒は共倒れし、多くの者が自ら死に、廃墟と化した都市に住む残された者たちは水も電気も断たれ電波も飛び交わなくなった虚ろな日々において、子孫を残す希望さえなくしたまま愛を確かめ合い、もしくは、最後の安息に落ちる。三〇六五階と錯覚される高層ビルの一室にて、一人の男がキーを叩き続けている。滑らかで優雅なブラインドタッチをする様はピアノの鍵盤を叩くかのようで、その指には九つの指輪が嵌められている。様々な指輪が白く薄い超小型ノートパソコンのキーボードを照らすライトを反射し光の残像を生む。九つの光の線。室内には数多くの電池が箱詰めにされ、自家発電機が幾つも転がり、現状に対する抵抗の面影が漂う。積み重なるノート、紙束、ペンの数々。冬に差し掛かった季節、暖房のない室内には冷気が漂う。男の左手薬指にのみ指輪が嵌められていない。棚に並ぶ本にはこの男の名が点々と見える。叩かれる文字列――R# Aテクr u381 <+テエt?¿^テ T テ善 テ禿 ‡ u188 T Eテ テス «pテクテソ•テサテュ=テー!T’¸ ’Aテク テ津ッテ テ「テコ* ' #テ。テッ‰^½½テオ9テノ†<^=ナ。P 7 %E テ 6テウテオJ)ティo+Rテァ テ」テ辰2テー テ テ櫺+テ テテ ‡Oテ €n Dテコティ%yUテセn§|Iテソ&テ 0y¯jWテソZ l M ナ。テ בテク テケw• ;J ツェ テ ¹PP >/%h¡ |;“テ ¿ テ ‚…^テ偲ア$ 6 ニ津エT G½2Rq·テ禿静ィ* " 22テサ AP ‘‘—テ淌コ ニ但テコ,=$ }‚xテ敕ャ0C@>f0 TB e氾 ½ `雹警 ・・ ­0Pテ 莨ーM s $8陷台コ派ヲ-O×<テ ¥`テ,x Oテ 4 °0 ティ0 テ *h4テ ™テ ™テ誼2m p -¢テ佚ーテコテ」 ナ。 ¯テシ oh0´ h"’テ ` j°` tX¼‡テコ ¡ツェ£·7テシJテイテ ´[ テソ\`テ話 ’ €I ©テ —テ甘ィ#テュ…A テス¡ 0テ テッ(yナセ%{‚`>( ニ坦テテ 8テ テ zQB4 .%テ ­-¢テ ›テソ“¼ニ津酸 ‚ T'テ・ ナ。テシ ,ナク •Mh t h%W°‰!テ±™テ =ナ  テ «V 7テエh÷テ d² Uテ ` /テ ‚ €F‹Uニ津榲 テ テコ 4 0 sテ耽テ佚」テ妥シ× €|¤-テク¶0{テオテ …テク0Cテソ ¨ O¿ニ樽 „\テ「テォナセu381 ¬ E¯€Q§テ EV Mナセテ、«–テεー ¨dナセ¿¦テケu¶Bテ」¬ –テ „X®d?-×¼ テ「テス!–Ic¯©zテセf´テォ#˜テ・Oテオテ禿ォt3d4テ’QテォSテァ ¡yテヲ` j テTテサテ テコU ニ津ュ©Iテ ±€D¡÷§\'d5¨ ¶{テセi テ P •>テエナ :a0 pテ —テ ÷テヲY÷ ³A )テH¨ニ テォティaVニ津、Lテォテアテセテ「テシhテ N“—³ テ 3u¢M· テシ テ ©>»<テゥSテセテェテ ツコn テ $p‡–f テス9テ・U{テ欅テアテスktテクfテ *w‰テ・テ曵 /テ ¹&EJ2i:テシテ砿テ愿 ©?z3H ©W¶テテェ\ 3テεアテ ¸テ・テ・`テ 1u190 \¡AテヲEcテ槐。テォテ ˜ †‰ テ .ニ テ 9 テャ m|テャ˜C ^_ ¿|テサ ナス%–“テ氾崚 € T ?テ テ津ッ° >.< †% •テ。,HツェGテ姪イテ・テ柁 ティテケX テコ "V‰Jj• c¹'Cテアp „¡(Hテカx テ Qテソテ柁弛テァテ ,5 …テ =˜  テヲ q¬tティ0 ` cテ。 ´テイ00 ¡ •_テァEテ —„ テソテサテ テ テ7テ愿 ¨wテァGzナクf テ ¦u208 テ ティ4¹テ「Wテシa¢ツコ ]--MS­u144 [テ津 ?ツェw;テεュ{oテサテウ Cテア`テ ; テケテ.N®²テ陛 ニ %テアテソテスu188 ナ。 §ニ テ ‹„¯LPテヲ6ティ±'テェ Tテァ ¬)Aテスz¬†UM­テエテセ«0jf]#テ M ;?¦T¤テク“ナクRVヒ ˜テソテシテカテオテッ テ  Jテ € ニ k „U¢4ツオbQテヲテ †$w\テ テ ~ A ¾テεソテサテウ1テコ5[テ、A€r テソテケrgテォ)­テ」x |Jテスナ。+ テ・>›P ?Wテ「_テセu221 ?±aテュテ 4ナセ^テ ·r¿0 `テシIテシ÷½{ナクkテソテ毟| B ”%xEW 22W テク{テーテーVナ ‰ テ  `テ テシテ 4^uテ。"x-nテ禿阻テゥ÷ ‰^‚S¸e Yテエ;qテ ¾テ、9x1=9 / 9x2=18...1+8=9 / 9x3=27...2+7=9 / 9x4=36...3+6=9 / 9x5=45...4+5=9 / 9x6=54...5+4=9 / 9x7=63...6+3=9 / 9x8=72...7+2=9 / 9x9=81...8+1=99x999 999999=8999999991...8+9+9+9+ 9+9+9+9+9+1=81...8+1=9ナセ¦3 テヲ†I`†テオE`ニ 5Cテ "h テゥテ •ツェ テ湘 テ。テ ¯テ殃テェテ ¡•§¨‰BJ±テッ テ櫂‚i8 テッ€テ ­テ暗 ¡p0 v !T$ツェ/2テアUテ債コ)P’©[T‚c テ テ湘 }テ暗暗暗凝ャ テテ`¦...テサ テアテ」テε ‡1テ」@ テシ}テコテケテ !テ “テ … Oテ †0xx\`テウテ、#‚: +¡テ テァxテクナ。ナク| ’ティ4…テ € テェ†MテーZx (テス 2Hテクdテ梅Ikテ殱!•O†Kツオテ ®–テ 3テ凖 ²=†_¶テ ¶€[‘—@_™テョGテ敕ォ³u157 ナセu185 .·3テョgテ柆222 テシ}pテエテ㎏テ禿ョ_テ ·ナ テ嫁ス«テァナクy¤テ ‘®Liテセu157 }|s±テ・©~テサ]テソ 'sテ餐テ ­­Cナ禿、†\€!²6¸~emテ テ ¶テ テ謁T—hテサ» 0 ˜³ c<¶y}ナステョ ]テ テ崚 Gテ」­テエtテ妥オテ ×x3‘×9pテエテ」テ ² テ。テケJ :テ愿 ¯A>テケAテーu254 ™– ‚ \y\ツオ0÷`„ テ・¢ @)4hテセ‚テクナ塚ォ ·テ「 Aテア—•テセZ ° テケテ。¡p!ナス „9°^テ咯l|© テァ テ。 K  ‹テ ˜J¨?テmテ テー ‹ ナス5テ >ツェニ \_テ ¸ Wツオ* aテ P0 zテ崚 *‡E‚ +ティテ テ テ €p0 テ `テケテソ = テ ¨ (™&9¤¨テЙ—½ €テオ€`Hナ i„ツオ テセ£~ツェ 8Jテク /n¯kN| ` 3|]{[ 2テッテ羨|—テステクLテオ¡, Dテッテ <テ {テ欝DGテゥ•„?« ‰テコ¼Jテ6 † テーOテソAKティF¶ €lテ柎 ?テェテー?)Gテ テアテャ¸~,y ナセテ。テソ‹テ天V “Hqテ テ ` · テ針¸テクテアテ、> ¹¨ ¤`テ ’•UP3o÷テ終½u164 Iテュ1 %€eYLテ廃‰I €%iXB$dナクu144 テ禿 – d| テヲテェテケ``*?DX5c ,™uP ×-ナセナ ½u240 テ「@0 ^l~?テエrテ ` A€ €テ ニ馳Ix)テゥ„テー"2テ盈¯F¡;L4qq¤u143 テッ9ナ津 8tテ ½f1 テ ナ 2ナセツオ`テ *€テ =テシ h6A& mUテ テ

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世界が滅ぼうとしている。街の片隅で魂から壊れようとしている横たわった者に青年が話しかける。どうして世界が滅ぶんだ、それは創造が不完全だったからだ、造物主は愚かだったってことだ。街にはまだ長い建設期間をすべて放り素てられ半年ほど経った程度の建造物もあり一見廃墟の様相ではない。ただ、人が見当たらないだけだ。それでも注意深く片隅にて見つけられた者がくすんだ咳をしながら青年にいう、デミウルゴスか、プレーローマのアイオーンの模倣が不完全だといいたいのか、ヤルダバオートか、きみはグノーシス主義者か。タウ十字のネックレスをかけた青年は、痩せぎすの威厳を損なわず応える。俺のいた世界ではグノーシスなどすでにアイテムの一つだ、そして目を見開く。グリーンの瞳がエメラルドのごとくスパークを放っている。

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その青年はまるでどこか別の世界からやってきたかのように無知で、楽観的だが瞳の奥が冷たい。その髪は自ら切って染めたばかりのグレー、銀色がかっている。窓の外、真っ白な空に流星が一つ落ちる。九つの指輪をつけた作家の手で珈琲がいれられ、それを受けとると青年は、ありがとう、と言い、この世界が何故ゴーストタウンなのか、と、本当はそんなことは別にどうでもいいかのように坦々とした声で聞く。男の訝しげな眼差し。青年は室内を眺め回し、何故ゴーストタウンなのか、それはこの世界の常識なのかもしれないが、俺は知らないから、もう一つ、この室内だけ窓から明かりが漏れていた、人がいると思って来ただけで、貴方が作家だということを今知った、君が作家なら想像力を活かしてみなよ。そう言って珈琲に口をつける。見つめあう二人の男。青年の首にはタウ十字のネックレスが。薄く細い体が一枚のシャツ越しに伺える。冬も差しかかるというのにえらく薄着だね、と作家は、普段なら口にしない適当な言葉を吐く。俺は世界が滅亡に向かう直前に、この高層ビルが気に入って東に在った都市から移住してきた、君も話し言葉からこの土地の者ではないようだ、このビルは、三〇六五階のようだろ? そういって、珈琲をすする。青年がじっと見る。ピアノ線のごとき沈黙。この珈琲はおいしい。作家が切り返す、きみは異星人か何か、この世界の住人ではないんだな、面倒臭いからそういうことでいいだろう、きみは太陽と月が二つずつ浮かんでいることに驚きを得ただろ。青年が返す、俺の居た世界には月が四つあったから、仮に九つ縦に並んでいたとしても驚きはない。瞬きを一切せずコーヒーカップに口をつけたまま、一瞬だけ視線を下へ、そしてすぐに青年を見やり、机上にカップを置くと、異星人という言い方は失礼だった、異邦人だ、ふうん、そうか、不幸だな、明日にも滅ぶような世界へ旅しにきて、ぎらついた目、それとも、帰る手段があるのか、興味深い。青年が笑う、貴方は故郷に何の未練もないんだな、なら同じ言葉を貴方に返したい、明日にも滅ぶような世界で、作家だから作品作りとは、それも、意気揚々と、完成までにこの世界は持つのか、そもそも、それをいったい誰が読む? 淡々とした声、青年が立ち上がり窓から景色を。

 

 



 

 

 

 

 

 

 

明かり一つなく、都市の形状を残したまま荒廃kテ ‚テエ¬ hF h! U‰ テ ¼テ テ暗ク Wテ津ー¿cZテ・Bテ ¨ニ ®%ニ > テォテ テ釘$テ ` ティ0AEテ テ| h7!ナセ¹ナセA€e テ `‚U ÷A¦;テーテ「M $¸ O¿ニ樽 £ K†@P `¡ V¬ oティテッ×sテ €テォV縺昴l縺ァ繧ゅ≠繧矩Κ鄂イ縺ョ螂ウ縺ィ諱倶サイ縺ォ蝣輔■縺九¢縺ヲ、縺 縺瑚コ願コ>縺瑚カウ繧偵☆縺上▲縺ヲ荳 莠コ縺ァ霆「縺後j關ス縺。縺ヲ縺カ繧上▲縺ィ蜀キ縺溘>遐よシ 縺ォ豐医s縺ァ蝨ー荳ュ豺ア縺丞沂縺セ縺」縺ヲ縺励∪縺 。縺セ繧九〒、迸ウ縺ョ蠎輔豺ア縺縺蜈峨r蟶ッ縺ウ縺ヲ縺k 、縺九繧医≧7テステ鄭 x テ妥ソテ ‚ テー テ鄭#xJ¡™8B ^›Kテシ$* ~-‰•]2u129 P’?テク0@²:, SテイaqGテ崘鱈B-テソy テ =@ヒ 3' テ 8„T` ¾u179 テァテ湘葱•Y¢テク‹テソナクyp0 テ ‚ティ A§ . ½0Pナセ4Xz G­Tテ BRテ ¿ テ ©テケ;テ テェ/`Hテイ縺セ縺溷挨縺ョ諱倶サイ縺ォ縺ェ繧翫◎縺↑螂ウ縺九i縺ョ繝。繝そ繝シ繧ク縺ォ豌励▼縺※莉倥>縺ヲ繧ゅ>縺ェ縺 ゅr謇輔>縺ェ縺後i逕キ縺ッ螯サ縺ョ繧ゅ→縺ク蟶ー繧顔悛繧願オキ縺阪⊂繧薙d繧顔惻繧」ス縺阪◆繧医≧縺ェ豌玲 縺岼縺ァ蜃コ蜍、縺吶kQテュ ナ。テ …`テ,x Oテ 4 Oテ・kテ傘ツェ«™‡ L ¿ニ樽テス=V¹ナセ縺昴≧縺▲縺溯

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奇妙なことに気づく。青年が、だるそうに肩越しにいう、この世界の月は、太陽を反射して輝く代物ではないようだ、じっと観察しながら、月はブラックホールのように太陽の熱を吸い込んでいる、いや、太陽が熱を吐き出すように月は闇を生んでいる、二つずつある太陽と月、想像するなら、太陽の強いとき、それは昼であり、月が強いとき、今のように、夜ということ。地球の裏側ではどうなってる? 首元のネックレスに指先を。作家の男は答えない。キーボードを叩きながら、代わりに、目的はあるのか? 時間が限られている、何度も言う、明日滅ぶかもしれない事態だ、元の世界へ帰る手段がありそこへ導いてくれるというなら饒舌に答えてやるが、0.001パーセントでも滅亡の危機を免れる可能性があるんなら過去の諸々を考察する価値もあるが、切り離されてたった一つの目的地、滅亡という結果へ向かうだけのロケットのような世界だから、人類も九割方、命を投げ出した、分かるか、希望がないというのはそういう負のエネルギーを持つ。作家の瞳には打たれ続ける文字列が流れ続けている。差し迫っているんだ、そういうときにはそういう手法がある、つまり、新しい世界が生まれようとしている、俺の手で、今このときもkテカ†>テソテシeナ党テ。テ。 テ j ³テ @テ」テ榲 '$テー©Y•€`=|¯‡テ <¯テア§¶テ *SRテ ‡テ」テク テ」テ s ° °テ ´ (K€» 7テセ hテ 0 ^°テカテ テセ#テケ¢Y8¯テ学׸Lテ ' U uq ¿?5テε > テ崚 テ pI…!/テ ¥1テ °` KIニ津クN—ツェUテ .テヲ=テ愿コテー+yテ8F テ テク• pテ嗔B テ ティテサ Uテ」»®s Ugテ ®‰ ]‰テ ¡¡¡§テ 9¾Lhhhiテイ テ テウテ +†テ鞍 7—C=テヲ*テ …テー¬37¡“ナ竹[テ !テ . :Q “テ魁テ陛ェvD3{$‘S•A€テクテ 3A ~%テ !”Qテー ナクmテャテソ¾u141 ¾テ禿エテ禿 —? W— @€ Tテケテ拱テ¸v テ迂 テォ テ •テァテ テ診1 テ ? p S±oZテーテ冉テ・'e テク [ニ 5テ津ウlXテオgI­!|テゥテ凝萌×uテォ®c テ芸ナ テ 42n¦‚ ツオテ巷テ ®%]$©T! h,bB³²—Gテウ !„7¤テエD½f1 テ嘉 "™.ニ叩 *,テケテエ&%/‘Z (<テオ€`# ナ馳 テイテーテケテ テ ?¤iNTR}82i’yティ4‡‚XC 2=

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何らかの精神体のように青年には見える。作家だと思っていた、創造主だ。男が手を止めることなくいう、作家だ、新しい世界を生む存在にとって世界が滅亡に瀕していようが何ら関係ないだろう。むしろ、そういうときにこそ、この我が身が滅ぶその直前まで、強き、新しい世界を生むのみだ。逋コ菴懊′蟋九∪繧翫°縺代k繧医≧縺ェ逵シ蟾ョ縺 逾槭∈縺ョ蟠享縺九i蛛カ蜒上∈縺ョ蟠享縺ク縺昴@縺ヲ縺▽縺励°蛛カ蜒上蛻」ゅ@邏ー蛻喧縺励%縺セ縺弱l縺ィ縺ェ繧翫◎縺ョ謨ー縺ッ辟。髯舌↓縺ョ縺ウ繧区ーエ蟷ウ邱壹r蠖「菴懊▲縺ヲ繧ゅ≧驕・縺句スシ譁ケ縺ョ逾槭荳 轤ケ繧り埋繧後※驕 縺 謨ー縺医i繧後k遞句コヲ縺ョ諤ァ諢溷クッ繧ゆク 莠コ縺ョ莠コ髢薙r蛹逧ョ閹壹d豈帷ゥエ縺吶∋縺ヲ縺ォ諡。謨」縺苓┻縺ョ繧ュ繝」繝代r繧ェ繝シ繝舌縺怜ソォ諢溘辟。髯舌→縺ェ縺」縺ヲ荳 莠コ縺ッ辟。蛟区 ァ縺ィ縺ェ縺」縺ヲ莠コ鬘樒キ乗焚繧定カ翫∴陦後″貂。繧 繝輔ぉ繝繝

まだ理解してないようだから言うが、本当に、この世界は滅亡寸前にある、きみは帰れるから実感をいつまでも持たないんだろ。
死から逃れられるなら、貴方でもそうしたいの?
機を、逃すなんて、馬鹿だ。
さっき、元々浮浪者だったような者と話した、愚かな造物主による世界だから滅ぶんだ、と。するときみはグノーシス主義者か、と指摘された、その瞬間は面白い会話だったが、病いのせいかその者は話すことが断片的で支離滅裂でまともな問答にはならなかった、貴方は何主義者なのかと尋ねた、すると無神論者だと返ってきた、だが、神はいると答えた、そこまでは良かった、この会話はね、その者は孤児として育ち、若くから労働し、同年代が大学生になった頃、その者たちと過激な学生運動を行ったそうだ、分かる? この話。俺のいた世界では、かつて海の向こうで最初に起きた民主主義革命が無神論に近いんだ。神はいる、だが、神は、作った世界に何の影響ももたらせない、それが、その者の頭の中では孤児としての人生と混ざりあっておかしくなるんだ。
そう、誰しも当然込み入った人生があるからな。
俺はグノーシスなどアイテムにすぎない、と答え、それがその者の神経を逆撫でた、まるで人生すべてを否定されたかのように怒り始めたのさ。
作家がキーを打ち続けている。
太陽と月は昔から二つ同時に浮かんでいた、でも、それが二つずつになったのは、たった半年ほど前かららしいね。
人類は愚かなのさ、神のせいじゃない。創造主がなぜ受け手の担保をとらなきゃならない?
貴方は理神論者か。
きみは、ケイオス、ケイオトだろう。興味深い。

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広大なビリヤード台の上で惹かれあった二つの玉はカチンと小さな火花を散らす。きみと俺はそれでキスしたが、そのまま二つの玉は遠くへ離れて、そのあとも何度も俺はきみへ向けてキューを突いたが、一度も接触することなく、そして、また、ただただ広大なビリヤード台の上で幻影のように、多くの玉が遠くに幾つも揺らめいているだけなのか。グリーンの瞳に、短い髪はグレーで銀色。青年は、月が頭上に四つ浮かんだ過去に囚われる。恋は無情だ。愛は、手遊びで受け止めるには重すぎる。突いた玉は、蜃気楼のようにあったはずのターゲットをすり抜けてそのままビリヤード台と衝突し、ふわっと宙に浮いて、くるくると回転し、台の外の闇に落ち、消える。ダークサイドに、とある球体があったのだ。その暗黒にからだが溶け、青年は倒れていた、空には、太陽が二つ、月が二つ、同時に輝き、惑星の滅亡の報せを示している。かのようだと、最初に青年は思っただろう。倒れたままで、周囲を見回す。

青年は自らの情熱が吹き消えたのを受け止めるため、ある文字列からシジルを完成させただろう。虚の徒として生きるには予め陽炎のようだったから髪を短く切り銀色のグレーにその色を染めてグリーンのコンタクトレンズを瞳にかぶせ、消えた文字は d のみ。シジルと化した図像を薄い正方形の紙の裏に書き留めたのだ。その拾った紙の表には 8x8 の格子が描かれていて、奇妙な符号が生じ、球体が現れた、暗黒のような。それが、偶然の高次元魔術。これらのことが成立するまでに数多くの手続きが、実に様々な者たちによって――暗黒の球体の創造――次元の移動。青年の力ではない。青年は球体内部に溶けその傍らには彼の死体が転がる。失ったのだ、現世を。神殿なきゾスはキアを得て。空には、太陽が二つ、月が二つ。青年は思う、どこであの紙を拾ったのだろう、分かる、可能だ。広大なビリヤード台の上で新たに出会った二つの玉がカチンと小さな火花を散らす。

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生きたまま手足を切断されたのだという
蜂の巣にされた車 転がるタイヤ
批判した男女が殺害され橋に吊るされる
拉致 レイプ 埋葬
ミサイルやライフルの所持
数十人と雇われる殺し屋
泣き叫んでも決して声の届かない冷たい室内

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魂を売る、俺はそれをした男を少なくとも一人は知っている。作家の指先が止まる、きみの住んできた世界には本当に神や悪魔が実在してるのか、えらくファンタジックな世界だな。無言の障壁を打ち破るように、そうとしか考えられないという話だよ、一昨年まで、ある組織にいて、対立していた、タウ十字のネックレスに触れる、俺がいた組織を仕切っていた女も、もしかすれば悪魔に魂を売っていたのかもしれない、魂を売るってのは、世界が全て荒廃することを指すから。何の話だか分からないが、と作家がいう、少なくともこの世界が滅亡することと関係のある話ではないね、こちらは摂理だ、人類が神への敬虔心をなくしたから神罰がくだって滅ぼされようとしてるとでもいうのか、馬鹿な、確かに人類は利己的にすぎた、だが、それが神の怒りに触れる? 神はこちらに一切関心がない、おこがましいといえば神の味方についたような言い方になって不本意だがね。制して、違う、今俺が言った話はこの世の寓話ではない、俺たちの組織はそういった安易な結合をこそ憎んだ。なら、どうして俺に神の話を? 貴方が、理神論者とは考えもしなかったから。何を、期待してた? 分からない、ただ、俺は、きみとは違う、俺の物語を生きていて、俺は、悪魔に魂を売った男を恐れた、彼は死さえ超越し、世界の律を支配していたから、ある者は彼を魔術師とさえ呼んだ、ある世界観ではそうともいえるかもしれない、だが、彼は、超越した無、なんだ。俺たちの組織は解体し、仲間たちはばらばらに散り、俺はあるとき偶然、一人の男と再会した、エピソード、と青年が呟く、悪魔の囁きを耳元で。俺がいた組織で仲の良かった男だ、俺は、彼のようにあるとき髪を整えグリーンのコンタクトを入れた、そういうこともあるさ、俺は、何も生み出せない、俺が、混沌魔術の壁にぶち当たっていたとき、全く発想の違った組織を紹介してもらったという話さ、このダストでしかない世界を生きる術であれば、そう青年が言い終わる前に作家が口を挟む、きみが以前いた世界をどう捉えていようが、こっちの世界は、物理的にじき滅ぶ。

ケイオトとしてデザインされた人生はどうだ?

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空には、太陽が二つ、月が二つ。

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空に、月が四つ。

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ただし、青年が生きていた時よりも、少しあとの、ミクロな。とても一人称に近い。夕闇。

この世界はポルノグラフィであるから、と、あるとき出会った男が車を運転し湾岸を走らせながら言っただろう。その男は三十を過ぎたばかりの歳らしいが出会い系で知りあった一期一会の関係だから、幾らか偽っていた可能性はある。一年で千人ほどの男と遊んできたという。仕事を終えればメール交換から発展した男を車に乗せ、そうでなければゲイサウナに出向き一晩で五人以上と戯れる。二回、三回と会う男たちもいたが、性行為が目的で、恋愛に発展することはなく、そういった三百六十五日が砂のように落ちていったという。薄ぼんやりと顔やからだを覚えている者たちもいるが例外なく彼らの性格は記憶になく、必要ないのだ。運転しながらそう語る男を盗み見ながら、当時十八だった彼は、なぜかその言葉に心地の良さを覚えただろう。これから海沿いのどこかで車を停めてセックスするのかと思うとときめいたし、ただそれだけだというのも魅力的で、それは別の男の車に搭載され一緒に見ながらオナニーしあおうと言われた小さなDVDプレイヤーに映しだされていたゲイセックス映像のようだ。ただただ性的なことが延々と続く。一つが終わるとまたすぐに別の一つが始まり、繰り返し。彼は二十歳を向かえる前に車の免許を取っていてマンハントに出かけることが度々あったが、拾った男がイくとメールを確認し別の誘いに返信し移動する。女を乗せることもあったが十代の彼のスキルではポルノグラフィを思わせる退廃的な空気が漂うことは滅多になかっただろう。この人生には何もない。遊び相手を探し、出会い、性的行為をし、バイバイし、金を稼ぐ手段もいずれは性行為に切り替わり、そのビジュアルの良さも相まって、あまりにたやすく性に支配された日々が形作られたのだ。あの、湾岸線で助手席に乗っていたときから、彼の幸福はポルノグラフィを生きることとなり、オワフの住居を譲り受けたときに拾った指輪を嵌めていた数年間が最も極端にそうであったかもしれないが、それ以前も、それ以後も変わらず、だが、幸福を知っていてもそれが彼の自由意志を固めるわけではない。幸福への執着は、その幸福という概念にハンドルを受け渡すことと等しい。池袋に戻ってきたとき車の所有者でもあった同居人は去っていて、だからからだを売って稼いだ金で滞納していた家賃を支払っただろう。オワフにある住居は放置したままだが、いずれ誰かに貸そうと考えている。今は友人の手伝いで仕事をしているがきっと長く続くことはないだろう。あるとき、その友人が主催する乱交パーティーでゲイセックスした相手と横に並んで話していたときに、今度写真を撮ってもいいかと尋ねられる。フォトグラファーで、新宿二丁目のフリーペーパーにメールヌードを掲載させてもらっていたがその写真が気に入られて今度はゲイ雑誌で五ページ担当する仕事をもらえたという。それで彼は別にいいけどというが、なぜ、この人はカメラを持っているのだろうと思う。誰の意志で? 自らの魂に震わされて? さっきのセックスでつかみきれないなにかを感じたからと答える男。そうじゃなきゃカメラの魔力に惹かれることはなかったさ。つかみきれないなにかへの執着、ポルノグラフィからリアリズムへ崩れ落ちる装置であり、名もない男優が有名ポルノ男優になるきっかけだ。物語ね、と、不貞腐れるように思う、それは剥ぎたい代物だ、物語、それは個性を支える柱であり、無個性にたゆたう永遠性を脅かす。まぁいいよ、このフォトグラファーはキュートだし、撮影のあとに抱きたいね、もしかしたら彼の方もそういう口実に過ぎないのかもしれないし。

美学、それは彼にとって驚異だ。それを持ちあわせて生まれていたなら、アンダーグラウンド(地下)や、アバーヴグラウンド(地上)で、そういった文化の形成された場所で汗水たらしていたかもしれない。もちあわせていなかったからそれらの隙間、ディーパーグラウンドで自らのからだを使い、汗水たらしてきたのだ。収入源でさえそのようにして獲得しただろう。

今度、ゲイフォトグラファーのモデルするんだよ、ヌードがゲイ雑誌に載るみたい、そういうと女が良いファッションアイテムでも見つけたかのような目で彼を見てなにやら騒ぐ。適当に二人で笑っている。ハワイ旅行でも行きたかったら言って、俺さ、そこに住居持ってるし、何人でも、宿泊費も格安にするよ。彼は、好みのからだに首ったけになることはあっても一切恋愛に興味がない。オワフで見続けた、太陽にきらめく水平線。じりじりと島に垂れる陽射し。それに、俺はそこで神を見たし、

だから、もう未知のものに不安を抱いて生きる道理もない、すでに神のいない世界において。

ときに恋に熱狂する者たちがいる。なぜそうなるのだろう。

どうして、多くの者は死を恐れ、自らの生きた証を歴史に刻みつけようとする。

彼に理解できないことは多い。

暗闇で目覚め、暗闇で眠る。

いつだったか、ゲイサウナで大映しされていたアダルト映像のなかで青年が下半身丸出しの状態で太ももを両手で高く押されるように広げられてタマをむさぼりつくように舐められていたが、真横でその映像を見ていた男によって数分後彼は下半身丸出しの状態で太ももを両手で高く押されるように広げられてタマをむさぼりつくように舐められていただろう。拡散されて連鎖するポルノグラフィ。男は彼が欲しかったのではなく映像に映しだされていた光景を再現したい欲求にのみ憧れ、そうして形式に取り憑かれた男が魂のない器を使い模倣しそれでも最終的には生暖かい精液を飛ばす。精子はすぐに死滅する。彼はイった男を少しいたぶってからその平らで広いからだの上に射精する。闇の中それも生暖かく。そういった精子の無駄撃ちが巨大な建物のなかでたった一晩でさえ数えるのも億劫なほど行われ、会話少なく、連日連夜続く。陰嚢のなかですぐに生産されそこから陰茎を経た発射が生理的に望まれるのだから。そのサイクルは全員に共有されている。彼はさっきの相手がどのような男だったのかも分からないまま去ってシャワーを浴びにいき大部屋へ行き寝転んで真横のセックスをぼんやりと眺める。足元で別の即席カップルのセックス。複数の喘ぎ声。薄暗がりの真っ只中、性にのみ満ち溢れた密度の濃い時間だけが過ぎ、蓄積する。これは、学生時代の記憶のなかの出来事だ。だが、そんな時間軸など彼にとってどうでもいい。

二十歳、小瓶に入ったラッシュというブチルニトライトが薬事法に基づき規制が入った二〇〇五年。暗い大部屋にその香りが充満しあちこちで男たちの喘ぎ声が轟いている。そのなかの一員となって欲望の落し穴に落ちていく彼。あらゆる方向から手が伸びてきてあらゆる方向に手を伸ばす。突き刺さり前立腺とともに真っ暗な宙へ浮く。媚液が染み込んだティッシュを鼻もとに近づけられる。とろける。涎が落ちる。何本もの性器。表情すら見えない男の口内に吸い込まれる硬く昂るモノ。重厚さのない胸元。闇に包まれた昼の消失。誰かがイっても別の誰かが混じってくる。射精する者自体少ない。彼の側で肉づきのいい男にありったけケツを突かれた男が脱落するが他の布団の上でも似たような光景。別の布団では一人がくるまって眠っている。その横では即席のカップルが甘ったるく楽しんでいる。堕落に親しみさらに現れる人影。終わりなき背徳的饗宴。百人二百人の男たちがこの建造物には入場してきているから別室も盛んだ。ふらっと彼がそこを去るが背後の状況に変化は起きない。やや明るい通路に出てエレベーターで浴室へいく。たくさんの男たちが入浴を楽しんでいるなか洗い場へ。強弱はあれど二十四時間途切れなく続く性の施設に恍惚としながら浴槽内で天井を見上げる。永久機関のごとき市場。また行ってもいいし出てもいい。

あるとき、
もうしばらく抱き締めていてよ、と耳元で呟かれる。
彼は、そのようにして抱き締めてやる。だが、頭のなかで計算している。メロドラマが始まるかもしれないから。
あのさ、また会いたい。
俺と? やめといた方がいいよ。苦笑する。肌と肌が重なったまま。
そう。どこ住んでるの?
池袋。
オレさ、都庁から少し歩いたとこ。ほらあの銭湯の近く。
やさしく口づけして離れようとする彼を、男が力を加えて離さない。
もっと、しよ。
淡白そうな痩せぎすのこの男がまたすぐに勃つようには思えない。愛撫だけでいいのかもしれないが、彼はそれを求めていない。またね。
うん、といってシーツのなかへ消える。
立ち上がってそこよりはまだ明るい通路に出る。最初はさみしさからだったかもしれない。その感情に、もう手が届かない。

皆が皆、それぞれスタイルを作り、その仮構を生きる。積み重なった時間がそこに第二の魂を宿す。

一般サウナの屋上でタオルを巻きからだを焼く。微かな記憶が無意識下で揺れる。

かつて大学生活を棄ててオワフ島で暮らし、にもかかわらず日本に帰ってきたのは、拉致されたかのように誰だか知らない者たちの物語に飲み込まれたからだ。そもそも、ゼミで知りあった男からの国際電話に応じハワイへ飛んだが、その男の背景はなにも聞いていないとはいえ、その男の物語にきっと飲み込まれたのだ。それを彷彿とさせる出来事なら、日常、断片的にあったかもしれない。

誰かのために生きる、不思議な感情だ。

きみは他人に興味がないのかい? と、あるとき言われただろう。出会い系でその日のうちに落ちあって車のなかでセックスした男が一段落し缶飲料を口につけ煙草を吸いながら急に言ってきたのだ。ちらと盗み見、そうだね、と彼はいう。じゃあ一緒だ、と共感を口にし、でも俺以上だね、と吐き棄てるように言葉を置く、分かるんだ、似てるから、さみしいね、こんなにさみしい気分になるのか、都合のいいだけの男と寝ると、人生を見つめ直してしまいそうだ、男がそう矢継ぎ早にいったあとに鼻で笑う。自嘲だろう。彼は醒めた目で煙草をふかす男を見る。似てる…似てるとは思わなかったな、煙草を吸うことに集中している男の薬指、指輪に目がいき、結婚してるのかな、それとも自分自身と、と思う。やがて受けとったティッシュで下半身を拭きアンダーウェアを腰まで上げる。車の外は暗闇で、営業を終えた巨大なスーパーの影。貴方は、他人に興味がないの? と、あるとき女にも言われただろう。出会い系でその日のうちに落ちあって車のなかでセックスした女が一段落し缶飲料を口につけ煙草を吸いながら急に言ってきたのだ。ちらと盗み見、そうだね、と彼はいう。なら一緒だね、共感を口にし、むかつくけど、と吐き棄てるように言葉を置く、分かるんだ、似てるから、さみしいね、こんなにさみしい気分になるのかぁ、都合のいいだけのヒトと寝ると、なんか、冷めるわ、そう矢継ぎ早にいってから鋭利に鼻で笑う。彼は眉間に皺を寄せて煙草をふかす女を見る。似てる…似てるとは思わなかった、煙草を吸うことに集中している女の薬指、指輪に目がいき、結婚してるのか、もしくは自分自身と、などと思う。受けとったティッシュで下半身を拭きアンダーウェアを腰まで上げる。車の外は暗闇で、相手が男であっても女であってもリアリズムを回避したポルノグラフィの領域では性差に大した変化などない。満ち方の速度に極端な違いがあるだけで。

無駄に精子が舞い散る。

いざ横たわりあって相手がどうしても勃起しなくて不発で終わったことは何度もあるし、女とホテルに入りはしたが結局行為に至らなかったことも少なからずある。だがそれらも含めてすべて地続きとしてのポルノグラフィだ。相性が悪くてお互いいつまで経ってもノリきれないまま時間だけがすぎていくこともある。片一方があっという間に満足してしまい残りの時間がただいたずらに流れていくこともある。だがそれは起きて電車に乗って数十分経ったのちに延々仕事に明け暮れたあとで誰かと落ちあい楽しくやってまた数十分電車に乗るような人生となんら大差ない。上がってるときもあれば下がっていることもあってどちらかが長く続くこともあるだけの永遠だ。物語など望まないということ。彼は男であるから、自らの血を後世へ残そうという気もないから、三十を越えても尚これがずっと続くと思い続けている。オワフ島に住んでいたときの記憶の残照が脳裏に流れ、あのゲイビーチで砂浜に打ち寄せる波のように、汗滲む、直射日光の真下で。なにかとても大きな見えない物語の内部で勘違いにすぎない永遠を生きているにすぎないのでは、と。あの太陽は、ビデオカメラのレンズで、彼は、事実、本当にポルノグラフィの一登場人物にすぎないのでは、と。

彼、大橋正和が生まれたのは昭和六〇年、病院の所在地は青森だったが父の転勤の多さから日本各地を転々とし、大学は東京都内でそれ以降一応のところ池袋に帰る場所を持っている。続く転校からクラスメイトと深い繋がりを持てなかったため一人で遊ぶ癖ができてしまい転勤に伴う日々から独特の考え方を築きあげた両親の無責任な手放し方だったのかもしれないが親許を離れる際に学費とマンションの家賃をそれぞれ四年ぶん受けとっていて必要な生活費は種々のバイトで適当に稼いでいたがやがて友達とルームシェアすることで出ていくはずだったお金を生活費に回せるようになり、あるときから男相手にからだを売るようになる。東京にでてくるまで恋人はすべて女で、一人暮らしをはじめ最初に大学でつきあった相手も告白してきた女だったが、その恋を終えた頃から街をふらふらするようになり深い場所へ沈む特性からか男が男と出会うための場所を知り、そこで性的な一期一会を繰り返すようになる。大学では男女社会だがプライベートでは男男社会に紛れ込む機会が増え、ネット接続をしてもゲイの出会い系掲示板ばかりで、知りあった男たちの車の助手席に座り種々のディープな場所を教えてもらっただろう。そして、十九の冬、教室を出てエレベーターに乗ろうとしたとき、彼は同じゼミで知りあった男が先に立っていたことに気づく。その男の左手薬指には蛇が象られた指輪がはめられていて、青天の霹靂という言葉を知ってるよな、と、突然話しかけられたのだ。その男の名前も顔も最早思いだすことができないが、彼にとって初めての友達と呼べる男であったし、この男と出会ったことで大きく人生が変わったのだ。ただし、その変わったことと男がどういう性格の者だったのかとの間に深い結びつきはなく、親しくはなったがゼミのときにたわいもない話をしていたばかりで、だが、あるときその男から携帯電話に国際電話がかかってきたとき、深く考えることもなく出向いたどころか別名義を使い、彼はそのまましばらく日本へ帰ろうともしなかっただろう。彼に見える世界は一切の波のない見渡す限りの平坦な海だ。取れそうなときに取る感性だけ育ててあとはあらかじめ持たされたキャッシュカードを使い過ごす。暮らしていけるなら、他に何がいるだろう。存在証明に興味がない。夜が更けた繁華街では多くの者たちがエネルギーやストレスを持て余しているために金を払って必要ではなかったかもしれない物事を多量に摂取し、出会わなかった者たちと出会って接ぎ木のごとく物語を紡ぐ。彼もまた多くの人間と時間を共有してきたがそれがなんだろう。機会ができたから過去を棄ててオワフ島で生涯を終える? それで全然良かったのだ。

かつてオワフ島で用いていた偽名が再び舞い戻ってきたこと、そのときつけていた指輪と同種のものが再び左手薬指に現れたことは、彼にとって偶然とは思えない。遥か遠い土地の原住民が今に至るまで受け継いできたその指輪にはなにか魔術が宿っているように思える。魔術とは一般常識からすれば非常識なものだ。ありえないものだ。ゆえに、非常識なものを束ねる力があるのは魔術しかないともいえる。現代科学に基づいた常識によってばらばらに砕け散ったもろもろの事象が再生すること。それが、魔術だ。そこには何らかの失われた法則さえある。とはいえ、彼は単に、存在しないまま生き続けたのだ。それを執拗に繰り返すことでのみ形を保ったのだ。それは哀しみかもしれないが、それを飲み込んで余りある哀しみの海を漂流し続けていたのだから、別に何も大したことはない。かつてのようにまた、ただただ指輪を磨く。

男であれ女であれ、果てのない性行為に励み、倒れ込んだ相手を盗み見ながら指輪を磨く。

興味を持たれ、存在を問われれば、いとも簡単に物語が始まる。

それでも一期一会で、二度と会うことはない。

彼の人生を決定づけたのはやはりポルノグラフィについて口にした男の車に乗ったときだったかもしれない。転勤につきあわされ転々としながらその各地で女の恋人を持ったり別れたりしつつずっともやもやとしていた本質が一方向を向いて走りはじめたのだ。それはアイデンティティの確立というのとは違う。むしろ、アイデンティティの確立が永久に封じられたといっていいだろう。最早彼は大橋正和ではなくなり殉教者となるべく日々を棄てている。信仰というより、原理的無神論、ゆえに物語が拒否される。男根は刺激されれば勃つ機能のようにシンプルなものを持ちあわせているが、おそらく、非信仰との合一が見られたときに彼のエロスが高まる。一言で言えば、生など、どうでもいいのだ。生に意味を付加させるなど愚かしいことだとさえ無意識下ではいだいているのかもしれない。だからあるとき夢を見たのだ。海岸の。自らの写し絵のような死体とコトを行うような。それは女だったかもしれないが、紐解けば男であっても構わない。ただ波打ち際で、ただでさえ冷たい死体がさらに冷えていく。それにむさぼりつくようにセックスをしている――生に記号的な意味を与えるなんて!――航空機が頭上で墜落したかもしれない。バスルームで時間が止まりはり叫んだかもしれない。豪雨の日にガードレールを乗り越えて飛びだした車から笑みを浮かべ這いだしたかもしれない。口論があったのか、記憶が遠い。もしかすれば、決定的に心臓に釘が打ちつけられたのかもしれない。どさどさと天から死体が降ってきたかもしれない。複数の自分自身と殺しあったのかもしれない。そういった夢から目が覚めて額に手をやりふらつきながら全身汗でびっしょりだったためシャワーを浴びにいく。指輪を磨こうとするが蛇が象られたそれはいつだったか誰かにあげてしまったのだ。女が偶然くれた同種の指輪があったかもと引き出しをあけてみたがそれを左手薬指にはめようという気になれない。ひどい気分だ。しかし、繰り返された引っ越しのなかでむしろ育てられなかった、本質そのものであるのかもしれない。両親が夫婦生活を今も送っているのかすら知らない。

あらかじめ切り離された、無のなかの点。

以前きみと似ているといわれたとき、運転席で彼から顔を背けたまま裸の格好で男が、冷笑的だ、と口にする、反動なのか、俺はうっかり情熱的な恋心に陥るときもある、きみはなさそうだね。すでに、津波のように物語が押し寄せてきている。だから、さぁね、と落ち着いたばかりの男の性器を握りしめる。それで男は口ごもり、さみしいセックスはもういいよ、と制し、車内に無言がのさばる。いっそ脱ぎ散らかしたものを着て別の男探しに出かけても良さそうなものだが、裸のまま黙って助手席のシートを倒し首の後ろにやった手を重ねフロントガラス越しに暮れかけた空を見る。男が、似ているとはいったが俺は恋に落ちることもあるから反面どうしてこんな人生を送ってるんだろうって死にたくなるときもある、ねぇ、きみを支えてるのは何なんだろう。ちらっと男を見それからまた空を見続ける。男が、支えるとか愚問なのかもね、俺が、ただ凡人なだけで。完全に日が暮れる。おおよそみんな無意識に物語を投げつけてくるがそれをあえて受けとらなければ永遠の只中できらめく光彩となって静かに消滅する。バイバイする前、二度目のセックスに。冷たい心と火照ったからだと放出される熱い液。そして二度と会うことなく記憶から遠ざかる。

彼は、薬指、魔力の秘められていないスターリングシルバーの指輪を磨く。

かつてのオワフ島での一連の出来事など、彼にとってあってもなくても同じだ。なにも変わらない。

誰かに名づけられたら、また同じようにしてその名を使うだろう。

彼は、強固な姿勢でスタイルを生き続けている。暑い真夏の陽射し。汗ばむ肌。そして、声に出さず、口元だけで、笑う、濃く、青く、深い闇に。

窓から見える闇が青い。

物語などが始まる必要もなく。

むしろ永久に続く反復のなかに蒼い炎が揺らめき、白かった朝を麗しく漆黒に染める。

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壁に格子状の線が引かれ、男二人がその前に立っている。青年がいう、この上にシジルを念じればおそらく球体が現れる。すると、と作家がいう、きみのいた世界に行けるのか、もしそうなら、恐ろしい話だな。きっと、と青年がいう、向こうへ行けばこの神殿は閉じられ、もう二度と、この世界には辿りつけない。

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実際に、漆黒の球体が目前に浮かんだとき、痩せぎすの青年をじっと見据える作家の瞳に変化なく、黒真珠のごとく、ただ、左手を軽く動かしたのかもしれない、指輪と指輪が衝突する小さな音。遠近感なくゆらゆら揺れる球体を前に、作家は九つの指輪が嵌められた両手をだらんと垂らしたまま、無言で、やがて青年に視線をやり、少し唾を飲み込み、青年は、何か戸惑っている。違和感。だが、その理由に気づけない。帰りたくないのか、作家が察し、でもな、こっちの世界はじきに滅ぶ、向こうの方がマシじゃないのか、俺は、きみの話を信じざるを得ない、球体の出現を見せられたんだからな、一歩踏み込み、その漆黒の球体が、どことなく揺らめいているのを発見する。観察すると、それは球ではない。十六分割されたルービックキューブのような面を持つ立方体の黒い骨格が回転することでその残像によって球が形作られているのだと知る。さらに、一歩。きみが行かなくても俺は行く。作家が、暗黒に消え、それを追うように、青年も消える。

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縺丞・ウ縺ョ荳也阜縺九青年を次元の向こうへと導いたのは何だったのか。青年をケイオトに導いたのは何だったのか。青年をとある組織に導いたのは何だったのか。青年のそのような行動はすべて創造できないゆえの表現であったのに違いない。作家は思う、俺は、彼のように特殊な人生をこの今に至るまで経験しなかった、する必要がなかったのだ、還元できるからな、今にしても、世界が滅ぶその良いタイミングで次元を越えるチケットを貰えたからあやかっているにすぎない、特殊な人生、それは、弱き者の叫びだ、俺は、指輪を九つ嵌めているにすぎない。i譌ゥ縲↓縺薙逕キ縺ョ螻 エ謇 繧貞炎繧翫→縺」縺ヲ縺励∪縺」縺滓婿縺後>縺縺 縺 、縺昴l縺ッ蜚ッ荳 縺ョ雜ウ蝣エ縺ァ繧ゅ≠繧九°繧 、縺セ縺輔°、縺セ縺溽ケー繧願ソ斐@縺ヲ縺励∪縺↑繧薙※、縺励°繧 、繧医j髱「蛟定縺嶌謇九→、縺ァ繧 、髮「蟀壹@、蜀榊ゥ ? 縺セ縺輔°。縺薙逕キ縺ッ邨カ蟇セ縺ォ騾£繧九□繧阪≧。縺ォ繧ゅ°縺九o繧峨★、莠句ョ溘繧医≧縺ォ骭ッ隕壹&繧後k諢帶ュ縺御ス灘縺ォ豕ィ縺後l繝ュ繝槭Φ繝√ャ繧ッ縺ェ豌怜縺ォ貅 縺溘&繧後※、縺吶〒縺ォ諢帙♀縺励>、蜚セ豸イ縺悟哨蜀∈。逕倥>、譟斐i縺九>逶ョ繧偵@縺ヲ縺k。霑キ螳ョ縺ョ繧医≧縺ェ阮裸縺ォ繧よ繧後◆繧医≧縺 。| b@ナスf1 テ妥ョ.テァテス•“2テ蘗テコgテ嘉行テ嘉ュナステー‡テ柊 | ‹テコ³テ テ テ *テ革>—ナ奴テ テオ3テ禿 ¯テ凖ケテ斗テ榲ェナク˜{;テ、テ ´_¹^テεィykテ奪™ナセlt[¡ナ。ナ >´ …テ刺‘z‹”A {Hテウ“ テョj3"÷k« テ嘉ーdx +1テケcテ讐 ‚ 8 Sテク テクHテス×.J9テゥ テ "ニ但 S0ナ ’ テ嘉 テ <{cテク F~ ©0テエUティ`eテ堡叩テケ hKテ „N9£† テオテーテァナ。テ夫¥z/テ "Aテコ£テヲテ・テ テ 8テク3–%¯†Ht2Lテクdテ (¶J 6×W1テスgテヲ;テ gテセテソ†O•テ凝 ニ津ソナセu254 テ・テ円テャテヲ÷9†M§˜eナ 0 €-^ 5P4?テ Z•cテ。場面が、別の室内に切り替わり、窓の外で月が四つ輝いている。
おかしい、と声が聞こえそうなほど、青年が戸惑っている。
電気のスイッチを押し、女の部屋だ、どう見ても。歩きまわる。白で統一されたコンパクトで無個性な棚が幾つか配置され、雑貨や室内植物が点々と並ぶ。薄いピンクがあしらわれた白いカーテン、植物のようなカーブを描く電気スタンド、ショッキングピンクの大きなクッションが乗せられたベッドにふわりとかぶせられた柄のある布団、中蘇芳の円形カーペット、ベージュのソファ。円盤型の時計の横に二〇一二年のカレンダーがかけられている。青年も、その前に立つ。
元の世界では、あると思う、ここは。歳月が、十年経ってる、部屋の構造、確かに俺が住んでた場所だ。
拡散スキルの高い女だな。
いや、不法侵入になる、出た方がいい。
青年が全く同じ時間軸に戻ってこれなかったわけは、自らの死体に弾き飛ばされた為だが、生涯この仕組みを理解することはない。二人は、部屋から出るが、鍵は開けっ放しになる。青年は振り返るが、作家は気にせず通路を歩いていく。履歴書のいる仕事にはつけないが、それより寝泊まりの場所だ、俺がいた世界では冬に差し掛かっていたが、こっちは春先くらいか、と脱いだ上着を鞄にしまいながら、マンションを背に歩く。月が四つ、横並びに煌々としているテ菟`テ /} |z½~Vテ禿 )®mテ「テイテア テ <§テ・> f0 q謚 ..テ柆189 2u188 蜑ウ 豕暦セ ・?倬」ュ・L「S T豎セ凝セu143 Mォ卆Lァ;, ・・ヲテ晢スヲ嫦・C逎ャx 荒・陌 」GテセD陋 、 q・謾ャ_テス×`=U邨 m== ・ '}u188 H荳ソ ³ァ|・・¹「Q#・0 ㈹>€ ¡ H@": Sテェ¯—sxテセテ・ … テオテォ„Wテ。テ テ絞テュテサ 6ニ津 3テゥ テサ"テョlt#テ ¯¬ テーu157 Kナ u253 テョv9¼テイ›>L®ツェテエテウ7‰テ「テコqティbW½Ph テ氾コ¦? テ④テッ Jテッd.テュ¯•逶ク謇九逕キ縺後◎縺」縺ィ縺≧、荳夜俣縺ッ蜀キ縺溘>逶ョ繧帝 √k縺 繧阪≧、縺代←、鬲ゅr、縺阪∩縺悟桁繧 繧薙□螂ウ縺檎┌險 縺ァ縺≧、驥朱ウ・縺ョ繧医≧縺ェ迸ウテ ' •テ凖 テセzhテアテォテエテエテ十テエテ 27# テョ>T#テ ©テ 十年なら、人の外見はどれくらい変わる? と青年がいう、大差なくてもさ、それほど不思議じゃないかもね。

紙に二つの点AB、斜め上方に点C、更に斜め上方に点D。ABからCを通過しDまで定規があてられ、さっと、線が引かれる。
もしくは、ABの位置にある玉にキューが添えられ、突く、弾かれたCがDと衝突。

コンビニの、出口で、腰が抜けたかのようにへたり込む女。その背後に立つ髪の長い男。作家と青年が、擬似カップルと対面している。事故物件ゆえに安かったのだ。

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四人が夜の公園にある木製テーブルを囲んでいる。

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この彼の友達の女の妹がきみってわけか、柿本紗月、事故物件が平気とは興味深い。
私、欲しいものたくさんあるの、安い部屋に住めたらラッキーじゃん、でも、末有くん、生きてたんだ、お姉ちゃんびっくりするし。
末有と呼ばれた青年と付き添いの作家が目線だけで顔を見合わせたような仕草を見せ、このやり取り自体を無視し髪の長い男がスマートフォンをいじくっている。女の髪が風で揺れる。
彼、彼氏?
大橋くんのこと? 違うし。彼、ハワイ帰りなんだよ。そうだ、大橋くんの別荘に住まわせてあげたら?
髪の長い男がちらと二人を見、パスポートあんの? 家賃も貰うよ。
作家がいう、連絡先を聞いていいか、メモはいい、俺は一度聞いたり目にした言葉をすべて記憶できるから。俺は、折原輝弥という名でじきに作家になる。いいね、ハワイか。
青年が、行けないだろ。
滅亡直前だった世界にもハワイって諸島はあった、懐かしい、一度行ったことがある。
女がちらと大橋を見る。大橋正和は、そう、と涼しい顔だが瞬きなく、作家を見続け、連絡先を。直後、英語のイントネーションでオワフ島の住居の住所も早口でいい、二度いわないけど良い?
作家が、ありがとう、といい、女はそれで、同じく戸惑っている青年に向け、お姉ちゃん今、目黒に住んでるんだけど会っとく?
青年は、生前に当たる旧友に会う危険性もそっちのけで、できるだけ早く頼むよ、と答える。
作家が気を遣う。滅亡しない世界に連れてきてくれた恩は返すから心配するな。
大橋が、この世界は滅びかけているという噂でもちきりだ。
青年が、何?
大橋がいう、西に火柱が立ち、超高層建造物が、この地球に突き刺さるかのように一夜で現れ、それ以来、天使が降り始めている。
青年が、天使は昔も降ってたはずだね。
擬似カップル二人の空気を見て作家が、まぁ、大したことないだろう、と告げる。
青年が同調する。確かに、大したことないさ、滅亡直前の世界はこんなに平和じゃなかった、見ろよ、と作家に、街が、建物が、電力で溢れてる。
作家が、無言で、その光景を、やがて、鼻で笑う。

大橋正和が、そう、と再び涼しい顔だが瞬きなく、作家に視線を、繧「繝繧キ繝・繝シ繝医邱エ鄙偵r荵亊縺ッ謾セ隱イ蠕悟サカ縲→邯壹¢繧 。蜿榊セゥ邱エ鄙偵r菴募コヲ繧らカ壹¢繧 。繝舌せ繧ア驛ィ縺ッ莠悟ケエ蜑阪↓蟒Κ縺ォ縺ェ縺」縺溘i縺励>。荳峨▽縺ゅ¢縺溘す繝」繝螂・縺ァ豎励′縺、縺溘≧繧医≧縺ォ豬√l、縺ィ縺阪♀繧願「悶r縺セ縺上▲縺溯縺ァ鬘阪豎励r縺ャ縺舌>、襍、縺乗坩繧後°縺代※縺k遨コ繧呈 ェ縺励¥蜈峨k逶ョ縺ァ隕倶ク翫£繧 。迹幄除縺ョ縺薙→繧呈 昴≧。荵亊縺ッ縺セ縺 遏ュ縺函豸ッ縺ァ荳 蠎ヲ繧ょ相逋ス繧偵@縺溘%縺ィ縺後↑縺@縺 縺九i縺オ繧峨l縺溽オ碁ィ薙b縺ェ縺 。荵亊縺ッ豌励▼縺※縺↑縺′蠖シ縺ョ縺薙→繧帝□縺上°繧芽ヲ九▽繧√◆縺セ縺セ荳ュ蟄ヲ縺ョ蜊呈・ュ縺ィ縺ィ繧ゅ↓豸医∴縺ヲ縺▲縺溷・ウ縺溘■縺悟ケセ繧峨°縺◆縺 繧阪≧。荵亊縺ッ蟷シ蟆第凾縺九i縺斐¥譎ョ騾壹↓繝舌せ繧ア縺悟・ス縺阪〒縺溘∪縺溘∪鬆ュ閼ウ縺悟━遘 縺 縺」縺溘′、螟壹¥縺ョ閠′縺昴≧縺ァ縺ゅk繧医≧縺ォ諢滓ュ縺悟刈邂励&繧後◆騾皮ォッ霍ッ鬆ュ縺ォ霑キ縺 。迹幄除繧呈ァ区縺吶k隕∫エ 繧剃ク∝ッァ縺ォ謨ー蛟、蛹悶@縺滉ク翫〒譛ェ遏・縺ョ驛ィ蛻r莉」謨ー蛹悶@縺ヲ縺▲縺ヲ繧ゅい繝ォ繝輔ぃ繝吶ャ繝医r菴ソ縺縺」縺ヲ縺励∪縺@縺昴l繧峨r髮粋蛹悶@陌壽焚繧貞ー主縺励◆縺ィ縺薙m縺ァ蜷後§繧医≧縺ォ蠑上r菴懊▲縺溯霄ォ縺ィ縺ョ謗帙¢蜷医o縺帙繧ォ繧ェ繧ケ繧貞他縺カ。縺ゅk蜿倶ココ縺ッ、蠖薙◆縺」縺ヲ遐輔¢繧阪□、諤昴>繧剃シ昴∴繧九%縺ィ縺御ク 逡ェ螟ァ莠九□縺ィ蜉ゥ險 繧偵¥繧後k。荵亊縺ォ縺 縺」縺ヲ縺昴s縺ェ縺薙→縺ッ蛻°縺」縺ヲ縺k。蝗ス隱槭□縺」縺ヲ鄒手。薙□縺」縺ヲ蜆ェ遘 縺ェ縺ョ縺 。繝溘せ繝Μ繧「繧ケ縺ェ迹幄除繧貞燕縺ォ縺励◆縺ィ縺阪↓荳 谺 迚閾ェ菫。繧貞、ア縺」縺ヲ縺励∪縺%縺ィ縺悟撫鬘後↑縺ョ縺 。縺昴≧縺ュ、縺ィ隨代≧。縺▽諱九r縺励◆縺ョ縺 繧阪≧。繧ッ繝ゥ繧ケ繝。繧、繝医螂ウ縺御ケ亊繧貞他縺ウ謌サ縺昴≧縺ィ縺励※縺k縺御ク 蜷代↓蟶ー縺」縺ヲ縺薙↑縺縺ァ邨仙ア 螂ウ縺御ケ亊縺ョ鬆ュ繧偵縺溘¥。蛛エ縺ォ縺◆迹幄除縺後←繝シ縺帙ヰ繧ケ繧ア縺ョ縺薙→閠∴縺ヲ縺溘s縺ァ縺励g縺ィ蜀キ縺溘¥縺≧。荵亊縺ッ縺ェ縺ォ縺狗騒闖懊謇句勧縺代r縺励◆縺→諤昴≧。縺 縺 、迹幄除縺ョ譁ケ縺悟━遘 縺ァ縺ゅk縺薙→繧呈$繧後※縺k。縺昴l莉・荳翫↓闡オ髻ウ縺ッ螽∝悸逧

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ところできみの妹のことだけど。
え? と女が伏し目がちのまま、か細くいう。
紗月さんの記憶は……紗月さんがまだ小学生くらいだったと思う、向こうは俺のことを覚えてた、俺は最初分からなかった、十年経つと女って変わる、そう言いながら再会のあと泊まらせてもらったときの状況が頭によぎる。青年は中蘇芳の円形カーペットで横になり、作家はベージュのソファで眠っている、ベッドで柿本紗月と大橋正和が重なりあい汗を流している。
紗月のこと、よく分からないの、死んだ私の友達、つまり貴方――が住んでた部屋で、一人暮らしするって言いだしたとき、気味悪かった。
そう。と青年は、紗月の姉、葉月の黒いロングのワンピースに目をやる。シックに決めているというよりは、おどおどした性格がそのままファッションに表れたかのよう。十年という歳月は葉月にとって必ずしも最上のものではなかったようだ。
私、末有くんが死んだとき、そんなにショックじゃなかったの、と、ほとんど音階が同じような調子で言う。
え?
昔、一度一緒に寝たことあったよね、あのとき他の女から電話かかってきて、さも一人でいるように話してたじゃん。末有くん混沌魔術だとか意味分からないようなこと言い出してて、私馬鹿だから私の知らない世界に触れてみたいと思って受け入れたの。
どうした? と口を挟み、青年は、脳裏で記憶の交差に襲われる。
思い出したの、末有くんの死を聞かされたとき、末有くんは自分自身も真実のためにアイテムとして消費したんじゃないかって、だから悲しくなかった。
俺が十年経って生きて現れても驚かなかったのも、そういうこと?
違う、この十年で色々あったから。末有くんのことは忘れてたし、混沌魔術って言葉もさっき思いだしたよ、妹もなんだか変だし。
青年が動揺なく、俺さ、住む場所ないんだ、しばらく泊めてくれないかな。
いいよ。
早速移動しない?
うん、でも愛してるとか言わないで、末有くん、心なくそういえるの知ってるから、私馬鹿だからそういうのすぐ信じるから。
俺は真実を追い求めてる、言葉だってアイテムだから、じゃあ真実とは何か? それは態度だと、考えるようになった、あまり葉月さんと会う機会が減っていた頃の話、でもこうして当時の俺を知ってる人と再会してみて気づいたことがあって、俺はやっぱり混沌魔術を信奉している、ケイオトだってことさ。ある秘密結社に属してた時期があった、だから
……?
青年はこのとき、だから一度死んだことにして行方をくらませた、と言いそうになり、それを留める。……でも、俺はその結社にいた時期も、やはりケイオスを追ってた、何か手掛かりはないかと。
末有くん、変わってないね。
葉月さんも紗月さんも、別人のようだ、十年経ったから? でも、過去のきみの良かった部分を記憶してるから、それは、取り戻してもいいんじゃない?

青年は、自らの死の行方を追おうとはしない。考えつきもしない。死因は何とされたのか。両親はどうしてるのか。柿本葉月と暮らすようになってからも、そういうことを聞きだそうとは一切しない。青年は、女が暮らす部屋の別室で眠る。真夜中、いや、真夜中ではなかったかもしれない、眠るのが早かったから、それは、ちょうど二十三時五十五分、零秒。青年の枕元に人の気配がしたのだ。まぶたをあけると、世界全体が白い! 暗黒の揺らめきが人形を成し、きみは、江口由希くんかな、と若い声が話しかけてくる。
違う。
おっと、即答か、だが、それでいい、少しずらしたからね。
青年が寝転んだ姿勢のまま頭上に立つその影の指先を見ると、蛇が模られた指輪が銀色に光っている。
どうだい、ミラーボーイズに参加しないか?
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奇妙な夢だったように思う。青年は暗闇のなかで目を閉じたまま考え込む。いつしか寝入ってしまったがもう少し何か話したような気もする。起き上がり、ドアを開ける。廊下は真っ暗で女の寝息も届かない。そのままユニットバスへ、眩い、白すぎる、トイレを済ますだけのつもりが服を脱ぎ棄てシャワーを浴びる。湯がカーブを描き流れ落ちる。自らのからだを見下ろし、本当は死んでいるんだ、と思う。グリーンのコンタクトレンズを外し適当に洗面台の側に置くと、死ぬ前、つまり、滅びかけている世界へ旅立ち作家と出会う前、俺が模倣した男、緑色の瞳の男が奇妙なエピソードを語っていた、……オレはね、このコンタクトを外すと、別次元の光景が視えてしまう、そこでは夜、空に月が一つしか現れない、四つじゃないんだ、不気味だろ、そして、オレは同じように似たような秘密結社で似たような二人の元でダストと取り組んでるのさ、やはり、やつもいる、イィか、重要なことだ、やつはオレたちが住んでいる世界のやつとちっとも変わらない、まるで、同一人物のようだ、……ふと、胸元のタウ十字のネックレスに触れ、外し、渡す、青年は、結局ケイオスだ、と呟く、俺の真実はそこにしかない。ケイオトとしてデザインされた人生はどうだ? と聞かれたが、俺はそういう領域にいない。この世界で俺は死に、十年の時間を超えて、今、俺はここにいる。今、という瞬間の積み重なりでしかない、時は連続していない、あの滅びかけている別次元をこの死したからだで視てきた今、彼が話していたことも信じることができる。だから、さっきの影も実在していたと俺は気が狂うことなく言うことができる。ふと、バスルームの壁がタイルによる格子状であることに気づき、ここにあのシジルを描けば漆黒の球体が出現し、また別次元へ旅立てるはずだ、とテウテ ‹ rテシ¾™ ¡テカv›n‡a?テケティ|テォAテエ} gPテァテ・4°y~„? @¥s,テッテシ=ツコdティGテ禿ュ×P` G× ³` テ ¢9テヲiテ _zテ "vニ達 °©_‹テ テシテケ t<テ転0 t|,z_ テイ E“テサ f’? j=5テ ¶lテゥcテア, テ “テウテュ_ 6hテカテク cナス¨I”ナ津「 ^U¿z テケZヒ¾ 442``k? m~yツコtテサテ テ」4テコ§テ氾ゥテステ訊141 · “T­g^¢ )bWzテエテッ‰[A¡ Hナ 8テ z/テ」テケナ怒テ fm ²cテゥナ テェ!+qテゥSo6ツェテ u129 Yナ テ・テ $«÷O§ !˜o9$<テコ¢W£ テ GbWテ テ UHテ訊253 テコ|テ嘶 テ †r*kテコ ¿ テェテカナスz¤テ。!X’>R®テュテ崚愿 “テコ°` ”@C¤“テ oテ / テシsテ D…`テ Cテサ ティヒ テア, €·テケテ テァUA€ ヒ・テ ,¢\ i™Itテ凖疑bテイ§˜=¾»fテァN4¦u381 ナステ ,テ愿ケニ テ =¯l®

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縺▲縺ヲ繧ウ繧ウ縺ッ莠 〇荳 蝗帛ケエ縺ュ繝 ! 縺昴l縺ァ譛医謨ー縺ッ蟷セ縺、縺ゅk繝 ? 繧「繝翫ち隱ー?襍、縺乗沒縺セ縺」縺滓蕗螳、縺ァ、闡オ髻ウ縺瑚ゥア繧定
◇縺※繧ょセョ蜍輔□縺ォ縺励↑縺 。テ・iテ偲糎テコテ© &_zテ鉄~テ淒スqTナセD°‚ テエ C¥Dテッ€テ F* テゥ]テサテ »Z x . X”©ツコツオ_ ^g¯– テ伸 ½ p€ j =テ テ歙テ淳テク0 BS ニ テイ?W
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柿本紗月が大橋正和と重なりあい汗を流している、他に誰もいないベッドで。
私、お姉ちゃんとまた久しぶりに会っちゃった、電話だけで良かったのに。無造作に伸ばされた動きのある長髪にメッシュの入った男が女の首筋に熱い舌を這わせる。男は眉間に皺を寄せる、女の唇を唇で塞ぐ。それが離れるまで、十二秒。女が口を開く、相変わらず幸薄そうだった、真っ黒な服着てて。薄いピンクがあしらわれた白のカーテン、植物のようなカーブを描く電気スタンド、ショッキングピンクの大きなクッションが乗せられたベッドにふわりとかぶせられた柄のある布団、中蘇芳の円形カーペット、白で統一されたコンパクトで無個性な棚が幾つか配置され、雑貨や室内植物が点々と並ぶ。その光景は数日前と何も変わらない。末有くん、魔術師なの? そういうのほんとにいるんだ、魔法使えるのかな、驚くよね。男が攻めていた手を止めて女を見る。女が、この部屋元々末有くんの部屋だったけど、正直どんな人だったのか知らなかったのよね、内面とかそういうのは。ただ……。男がまた女をちらと見、物語だ、と呟き、女から離れてベッドに腰掛ける。そして蛇で模られた指輪を磨き始める。怒っちゃった? いや、世界が滅びかけてるという噂でもちきりだろ、あの二人はそれを鼻で笑ってたけどさ。そういえば作家さんの方、ハワイに住まわせてあげるの? 家賃さえ貰えればね。作家だからお金持ちなのかな。作家がお金持ち? え、そういうもんじゃないの? 彼はだが稼げるだろう、人脈を作るのがうまい、才能もありそうだ。どんな小説書くんだろ。興味ないな。あたしも、読むのとかは嫌だけど、でも言葉をすべて記憶できるって言ってなかった?――ほんとだったら天才だよね、私、彼が言ってた作家名も忘れちゃったよ、そう言って女が笑う。折原輝弥、と男がいう、きっといずれ彼の本がこの部屋に並ぶだろうな。嘘! 予言? 大橋くんも魔術師なの? あのさ、と男が聞く、マジで事故物件で安かったからここに住んだの? まさかお姉ちゃんの気持ちとか考えないのとかいう説教? 指輪を磨いていた手がぴたりと止まる。何をいってるのか分からない、きみは……。柿本よ。そう、紗月は。初めて名前で呼ばれた、嬉しい。指輪から離れている手はいまだぴくりともしない。そろそろ寝よう。女がベッドから起き上がり毅然とした表情でいう、そうね、貴方がいうところのポルノグラフィじゃなくなったね。大橋正和は、女に顔を向け、キスする。

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記憶。

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いつまでも続きそうな世界だった、だが滅びかけているという噂がたつようになった、それを、彼らは鼻で笑った、俺は実のところ、滅ぼうが滅ばなかろうが興味ない、二時間の映像なら、その二時間がきたところでエンドロールが流れて止まるだけだ、そして、制作者はまた似たようなポルノグラフィを作って流通させる。

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大橋正和は、かつて江口由希と呼ばれていた一人だったが、あのとき、送られてくる小説を読み、そこに描かれていたメッセージを汲みとるべきかもしれないと何度も思いかけては、交換可能な関係性を見つけ意味なき性の只中に漂っていただろう。いまは小説群も手元になく、それを送ったと思しき何者かからの連絡も完全に途絶えている。

 

デッドエンド。

そして始まる、と作家が光を走らせながら、キーを叩く。
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I don’t give a hang.
関係ないね / 気にしないよ

BRETHREN, I SPEAK AFTER THE MANNER OF MAN; THOUGH IT BE BUT A MAN’S COVENANT, YET IF IT BE CONFIRMED, NO MAN DISANNULLETH, OR ADDETH THERTO.
兄弟たちよ。世のならわしを例にとって言おう。人間の遺言でさえ、いったん作成されたら、これを無効にしたり、これに付け加えたりすることは、だれにもできない。
- Galatians 3:15

 

 



 



青年はシャワーヘッドからからだへと流れる湯を切り裂くように、意識をノーシスに置く。もはや全てお膳立てが整っている。誰かが次元の扉を開き、多くの者たちの束が、青年の創ったシジルに魔術を秘めた――印は偶然にも形而上が当世界へ落とす影となり、室内を覆うタイルと結びつくことで確実なものとなった――故に、青年は全てを無効にすることができる。それはすでに生まれながらにして無とともにあったのだ。青年は多くの生贄の代わりに自らの魂を捧げ、律したのだ、世界を。しかし。青年はここで幼少時の記憶に囚われる。混沌の夜明けだ。それは自らの内にあり、その花を開いた中には血が渦巻いていた――連なる血族は聖書の元にあり、集約される記号はタウ十字だ。軋轢が軋轢を生み、業は業を呼び、青年が産声をあげたときにはすでに夜明けが始まっていただろう。薄い青色をした空。やがて祖父の書斎で多くの時を費やす。数多くの禁断の書物がそこには眠っている。地球儀は黒く塗り潰され、八方へと伸びる赤い矢印によって早くも無効とされる。青年は、何度も死を望み、幾度もあらかじめ失われた生命を渇望する。時を経て柿本葉月と親しくなる。今は見る影もない思春期の明るい女と、その側にいる彼女の妹と。偶然妹の方に出会い、葉月と再会し、彼女にはいったい何があったのだろう、それでも何か力になろうと口にしたはずだ、今は別室で眠っている。ノーシスの元で、これは無効とされる。もう少し歳を経て、秘密結社に所属しただろう。魅力的な女をその恋人が支えることで当現実そのものに別次元を重ね合わせる技術を進めていただろう。そして、対立組織との形而下での抗争が秘密裏に始まっていたということが組織の解体とともに知らされ、あるとき青年は確かに出会い、そして逃げたのだ、恐ろしい出来事だが、これもノーシスの元で、無効とされる。また以前、ある女に恋しただろう。それは、時を越えてビリヤード上で青年に死をもたらすが、これもノーシスの元で、無効とされる。やがて滅びかけている世界で作家と知りあい、力を用いて時空をともに越える。旧友姉妹と再会し、何者か、男と出会っただろう。これから何かが始まる予感がする。これもノーシスの元で、無効とされる。多くの、背景を持った人物たちと結びつき、自らのいまだ見えない背景をも含め、まるで気になることもなく、真空の意志で、無効とされる。すべて、無効。そして、真実だ。青年は、真実へと、旅立つ。しかし。何者かが枕元に現れたのだ。シャワーから湯がバスタブへ流れ落ちていく音が徐々に聞こえてくる。次第に、大きく。より、大きく。現れた彼といったい何を話しただろう。なにか、意味の分からない名前を口にし、参加を勧められたのだ。ミラーボーイズ? 失敗だ、呟く。それをどのようにして無効化すればいいのか、幻想のナイフによって、突き刺せない。指と指との間で何度もナイフがテーブルとの音を立てるばかりで一向に鮮血が舞わないまま、リミットに達したかのような、蒸気が、ユニットバスの全体を覆っている。青年はそれで、些細だったはずのことさえも気になり始める。作家のいた次元ではどのような事態の元で地球滅亡へ歯車が回ったのか。今いるこの世界で火柱とともに超高層建造物が一夜にして現れ、またしても天使が振り始めたとはどういうことか。数分後、青年はバスタオルでからだを拭いて元いた部屋に帰り、コンセントに近づく。柿本葉月が以前仕事用に持っていたスマートフォンを借りていたはずだ、と記憶を取り戻し、自力で所有済らしい作家の番号をプッシュし通話する。だが、作家がいう、そのことは来年刊行される本のなかでフィクションとして記しているから今は話せない、と。そんな、きみを救ったのを忘れたのか。忘れる?――きみこそ忘れてないか、デイスティック・オーサー、人類は愚かなのさ、創造主がいったいなぜ作られたものにまで影響を及ぼせると信じ得る?テ堙「テ Cニ津ッテサナセt] ‰jテオ¹ ¬テサ¾テ。tテ」テ姪 テソ @-¶€Rテ —`dテャ? ナ。’vW] 1ナ {– ニ津オ†IテーZ‹±テォテ テ ニ津 ”x¬テ ¸4 ’p テ佚ャ?$iテ層‡テセテ <•¼ ` ¾f1 テ妥シナク§Gテεオ2~5N·テスティ¹テッ- テケK—A !< テ凖 C kナ。 テシxテクテ ¹テソテ静 | テ 8C € テ H– ツコQj@ ?Rテ、oテ行€B テアテゥ*•テ ÷-<テ、Vテ $テョテ掎143 Q テ弼׏Oテ9ティテャ’テ柊¼'テ %°B¢Wテオテセ ¾テ ¦テケ «テシ2[ テコ-テエ”テゥテャ ¾g¤=Wテ €テエU@ テッ :>~¬ &J^¬3<テイ¨Tテ、テアテク–}QX—C4テー%Q%Y#テー)テ、4テサd` ‚ WG¡˜テエ テ E^テ ;——¦テッc¥ ¯|‚xテクテソテ t?V|テ栗 テォテ衆9テケテ狙zテ # ナセテ 9テ ¾テ・±テ 2'‡< ;×GC テエ<**,÷テッ÷# ”ティテ崚 ¾˜テコ ¾テ u178 逋サ蝣エ莠コ迚ゥ縺溘■縺ッ縺オ縺」縺ィ豸医∴縺ヲ縺¥縺セ繧九〒髴槭∩縺梧匐繧後◆縺ィ縺阪↓阮i縺ィ蟋ソ縺瑚ヲ九∴ 蜀阪髴槭∩縺瑚ヲ也阜繧定ヲ▲縺ヲ縺励∪縺」縺溘°縺ョ繧医≧縺ォ” ‚ (~xmテイテー ナク,ナ ®ナスu254 ~VテオCテェ テ ニ テシテオxuテ暗毒 «¬,テ津ソC,t!†PP»テソiテ テ「XテケSsテ廼 V>V jツオ“, tP` Bテ ¦_!×テクC ‹テッ)×ニ叩 V テ儡A™Pテシテ崚ァツコ÷±/テ {ו6<テー ³[÷ツコ‚ テー £テソテコg´テウテ票テ嘉凝 テ *T>B÷¨f1 テ嘉、d\”{\I ナ ¼|D テコ‘テ 445,¦テ歛 €ナクツェ±テー BTmXテク"[.テ ‡テソP]テ姪ウi ヒ テ。r¿†k %テャ©テ ·テクvz0¾˜’ テカ¾テ。ナ €—~テ ,°テエテェテセナ。u353 テウテ >f†R”テ弩³^–“テ偲 ティz =テソテ撲¯Iナク|¹ ­0諢帙@縺ヲ繧九h 縺阪∩縺後>縺、縺セ縺ァ繧ょケク縺帙〒縺Brethren, I speak after the manner of men; Though it be but a man's covenant, yet if it be confirmed, no man disannulleth, or addeth thereto .3:15 兄弟たち。人間のばあいにたとえてみましょう。人間の契約でも、いったん結ばれたら、だれもそれを無効にしたり、それにつけ加えたりはしません。ガラテヤ人への手紙 3 ゅ▲縺ヲ縺サ縺励> 螂ス縺阪□”テクテク ¿Z§) ®テクテォ ‡テ、テュテ ¯0テ € W @.Vテ偽+‰テ !テ吸K テ崘セu352 $ニ叩荳也阜縺ォ豌ク驕 縺悟ュ伜惠縺励↑縺%縺ィ繧呈繧 テ テ .テコ£ティcテー „テエurテ ‚i テウ Aテャ0テス=,t%†RKKナクナクr¥ =°H 8m\ テケ[–©uテオ$’ZD±[‘ Ph テ姪「°h テ覗“テァ¯_ $^p3Bテ dナクD¹¯ „=2テ テ ‘HナクzZ°ニ †—¾>テ僭テァテ ¡*テ妥惑® ¡w_

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空漠とした

小説を手がけているときだけ生の実感を得られる。
キーボードを叩く作家の隣で柿本紗月が寛いでいる。椅子。テーブル。ティー。今がそのときなのね。スーパースリムの煙草を薄いアルミの灰皿に押しつける。
今は、家賃を払うために昔創った小説を一言一句思いだしながら打ち込んでるだけだから。九つの指輪。隙間よりも布面積の方が大きいためにそこまで肌が透けて見えない黒のシースルーシャツ。
送電線が木柱らしき区域の多角形鉄柱近く。空はどんよりと曇っている。
柿本紗月が頬杖をついて、椅子に腰掛けマニュキアを塗っている。
大橋正和は久しぶりのオワフ島ということでレンタカーを借りてクイーンズサーフビーチへ行ったきり帰ってこない。十六マイルほどでフェリーウェイを使えば三十分、料金もかからないが、彼はお持ち帰りでもしない限り下道を選ぶ。数年前の観光ガイドブックやポルノ本が転がり、長閑な。かつて活躍していた車はエンストで動かない。作家にも大橋にも相手にされず不満は募るが、無理言って連れてきてもらった手前愚痴をこぼせない。テラスのハンモックで寝転がろうとしたが傷んでいて気分が乗らなかったのだ。お茶でも煎れようかと一段落したのか作家が気遣う。
私別に、観光したくて来たんじゃないの。
大橋の過去に触れに来たわけだ。黒真珠のごとき瞳が光る。
流石、作家。私なんであの男と一緒にいると思う?
池袋のバーで知りあったって言ってたな。共鳴したんだろ。きみはきっと、余分な努力を拒む人だ。そして、そのことに将来的な不安を持っている。
そうなのかも! やっぱり観光なんてしなくて正解だった! 実はあなたともお話してみたかったの。
作家がティーカップに口をつけ、促されたかのように女も同じ動作をする。
私、やりたいこと特にないの。さっき生の実感って言ったけど、それって、必要なことなの?
必要だ。
やっぱりあれなの? 女みたいに子供を産めないから創造するの?
今ね、新しい小説の構想を練ってるんだ。来年刊行されるだろう。気づいたんだが、この世界は、俺が数日前まで過ごしていた世界とさほど変わらない。かつて親しくさせてもらっていた出版社と同じ名前をネットで見つけてアポをとり会いに行ったが、俺のことを知らない、俺が知っている者たちの多くで成り立っていた。それに、俺と同じような人間にも出会った。彼は作家じゃなかったけどね。
ふーん、と涼しい夏の風のような声で、貴方も男なのね、男は女と二人きりになるとお喋りなの。
分かるだろ。俺は別にクレイジーな人間じゃない。並行世界を渡ってきた事実に、まだ戸惑ってんだよ。
女が怪しい微笑を浮かべる。新しい小説ってどんな内容なの?
作家が瞬きせず女を見据えていう。俺が住んでいた世界がなぜ滅ぶに至ったのか、それをフィクションとして記している。だが、物語はもっと別の、強く創造に満ちた話さ。きみの幼馴染の、末有くんという男、俺は彼に導かれてきみのいる世界にやってきた。だが、次元のゲートをくぐる技術を彼が創造したとは正直思えない――鼻で笑う――偶然つかんだのさ。その偶然を再現してみせた手腕は認めてるよ、相当にね。とにかく、この技術の出処は別のところだ。この世界の住人が作ったのか? さらに、別の次元の住人かもしれない。ずっとそういうことを考えてたんだ。魅力的な題材だろ。
女がデスクトップを指差して聞く。どうして文字化けしてるの?
さっき昔創った小説を一言一句思いだしながら打ち込んでると言ったが、骨格以外の文は置き換え可能だからね。
眉間に皺を寄せて、顎に指をやり、女が考え込む。研ぎ落として短編小説に作り変えるってこと?
いや、文量は変えない。単純作業が退屈だから遊んでるのさ。あとで、きちんと打ち直す。
てゆーか、もしかして、瞬時に文字化けに変えられるってこと? 記憶するだけじゃなくて?
アスペルガー症候群と言われ、だいたいの人は社会生活に支障をきたし治療対象となる、アレだろう。
天才と狂人は紙一重ってやつ。
それは慣用句だな。すべてそういうふうにして覚えてしまうだけなんだ。
女の目が輝いている。大橋くん、帰ってこないなー。
作家は、まるで空気を読んでいない。何らかの創造主がいて、その断片に、俺は巻き込まれたのかもしれない、という。異様に、嬉々としている。

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えらくどんよりしてるね。お姉ちゃんの鬱が移っちゃったんじゃない?
いや、でもなんで俺を呼びだしたの?
白のパンツに白のごつっとしたハイヒール。襟首がジャケット風の長袖シャツはグレーと白の網代格子。ゆるい質感でパーマがかかった肩までかぶさる髪はアッシュブラウン。メイクはガーリー。ダークブラウンのフチが入ったカラコンの瞳は輝いている。
柿本紗月と改めて再会して青年は唾を飲み込む。やっぱり姉のことが心配なの?
折原さん、凄い、本物の天才なのよ! そんな彼が末有くんに一目置いてるの。だから話してみたくなったの!
折原……? 誰?
折原輝弥よ。末有くんと一緒にいた作家の人。
ああ、そう。青年はカフェのテーブル越しに柿本紗月をじっと見続けている。
何?
いや、俺が覚えてる紗月さんは、もっと野暮ったくて家の中が大好きで、十年以上経つとこうも変わるんだなと思って。
いたずらっぽく、女が笑う。末有くん、魔法使いなんでしょ?
あの作家がそんなこと言ってたの? てゆかあの作家もこんなふうに呼びだしたの? 言いながらどうでもいいかと青年は思う。
折原さんがね、契約を結ぶ前に現地を見ておきたいって大橋くんに言ってきたの。それで無理ゆって私の仕事にあわせて一泊ハワイに行ってきたの。そしたら、折原さんパソコンに向かってずっと仕事してたんだけど、すきを見て話聞いてみたら天才なのよ。そんなことより、魔法使いなんでしょ? ケイオトって何?
混沌魔術だよ。そう言った途端、前に乗りだしてきた女を見て、馬鹿にしてるだろ?
夢のなかみたい。
青年は驚く。考えてみれば、ずっとこのような普通の反応をする常識的な人間と係わってきていなかったからだ。夢、か。
女が興味津々に次の言葉を待っている。青年の、短い髪はグレーで銀色。
きみは今トランスモードにいる。テンションが高いね。俺たちは普段ニュートラルモードにある。そして散らかされたおもちゃ箱のように夢を見る。ドリームモードだ。これら三つのモードとともに俺たちは生活してるわけだが、意識のギアを入れることでノーシスと繋がるマジカルモードに立つことができる。ノーシスもグノーシスも日本語として呼び名が違うだけで一緒だが、巷に溢れかえったポップなグノーシスという言葉と使い分けるために俺はノーシスという言葉を用いる。ノーシスのもとで、テンションも何もかも、霧散する。魔術を用いるとき、マジカルモードに立つことが必須だ。実は先日、俺はみたび、次元の扉を開こうと試みた。だが失敗したんだ。だから落ち込んでるの。もっというと、俺は意識のギアをまったく操れていないことに気づいてしまった。魔術師ってのは魔法が使えるとかそういうんじゃなく、自在に意識のギアを入れるスキルを習得している人達のことを指すのさ。マジカルモードにさえ立てば、誰だってマニュアルを読みながらでもいい、魔法は使えるんだ。そこは別に凄いことじゃないのさ。
突然、饒舌に喋りきった青年を前に、女は苦笑いをしている。それから、末有くん、何者?
昔、紗月さんの姉といたとき、こういうことにずっと取り組んでた。
昔、という言葉に引っかかり、女が違和感を口にする。昔、ていうけど、末有くん、若いよね、見た目の話だよ、魔術って――女の目が泳いでいる――若さも操れるのかな。
もしそうだと言ったら、興味持つんじゃない?
女が突然、話を変える。お姉ちゃん、大丈夫なの?
さあね、この十年、何があったか教えてくれないし、聞いても、私は馬鹿で男運悪いってその一点張りだから。
きっと、本当に大して何もなかったのよ。女が伏し目がちになる。
俺は昔の明るかった葉月さんを知ってるから、当時の感覚を思いだしてもらえるよう色々連れ出そうと考えてるんだ。
その台詞を、女は信じそうになるが、怪訝そうな目で、先程の、さあね、という台詞を反芻する。
青年は依然、女の容姿に釘付けだ。
大橋くん、別に私の彼氏じゃないから。
え?
私も男運悪いのかもって思っただけよ。
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フレーバービールのボトル二本が空けられている。紗月がマニキュアを塗りながら、結局さぁ、末有くんはお姉ちゃんのヒモなわけ? お姉ちゃんそれでいいの? そう問いただされた葉月は紗月の背後のソファで指輪を磨いている大橋をちらちら見る。私のことはいいじゃん、この服だって、末有くんが一緒に選んでくれたんだよ、それより紗月は大橋くんと相性いいんじゃない、お似合いだと思うよ。紗月が眉をひそめて、あのね、服はいいよ、いい感じ、次は男見る目養った方がいいんじゃないかなぁ、このヤリチンとお似合いとか私に失礼だし、だいたい、仮に似てる部分があったとしても似た者同士の結婚は不幸になるの、知ってる? 紗月、もう結婚のこととか考えてるの? てゆかお姉ちゃん考えて男探してないの!? 私、ピュアなの、相性のいいパートナーだからこそ築ける特殊な領域ってあると思うんだ。領域て、末有くんに洗脳されてんじゃないの、目を覚まして、お姉ちゃん。大橋がずっとスターリングシルバーの指輪を磨き続けている。時折、窓の外を見続ける青年、末有に視線をやる。それから、突然立ち上がり、当然のように紗月の横に座っていう、到着しないな。
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青年が窓から離れてトイレへ行こうと大橋の前を横切ったとき、呼び止められ、俺がオワフで暮らしてた頃、誰だかも分からない男から携帯に小説がたくさん送られてきて、その中には次元を越えるまでの描写があった、闇黒の球体が浮かび上がって、そこに飛び込むと並行世界として存在するらしい別の次元にいってしまうという、きみもそういうふうに次元を越えたの? 青年は動揺する――指輪と指輪が衝突する小さな音――遠近感なく、ゆらゆらと揺れる漆黒の球体を生じさせた青年を見つめ続ける、かつての情景の中で浮かび上がる作家の男の姿――とても冷たい、時自体が凍りついたかのようなあの数秒の光景を見た者は他に一切いないのに、その情景を突然指摘されたのだ。大橋が、青年の動揺を前に小さく溜息をつく。トイレに行こうとしてたんだろ? 青年は言葉をひねりだそうとしたが諦め、廊下に消える。作家が到着したのは、青年がトイレのドアを閉めた直後だ。ドア越しに、ハイテンションで騒ぎたてる紗月の声が聞こえてきて、もう少し時間を置いて部屋に戻ろうと思う。それより、大橋は、青年に何を言ったのか。ふいに三度目の次元移動を阻止した何者かの影を思いだす。その影は青年に、君は江口由希かと訪ね、ミラーボーイズだかいうものへの勧誘をしてきたが、左手薬指に蛇が模られた指輪が銀色に光っていて、それは、大橋がつけていて丁寧に磨いているものと同じスターリングシルバーだ。無意識に、タウ十字のネックレスに触れる縺阪∩縺ッ莉紋ココ縺ォ闊亥袖縺後↑縺縺九>溘 縺ィ縲√≠繧九→縺崎ィ 繧上l縺溘□繧阪≧縲ょ莨壹>邉サ縺ァ縺昴譌・縺ョ縺■縺ォ關ス縺。縺ゅ▲縺ヲ霆翫縺ェ縺九〒繧サ繝け繧ケ縺励◆逕キ縺御ク 谿オ關ス縺礼シカ鬟イ譁吶r蜿」縺ォ縺、縺醍闕峨r蜷ク縺↑縺後i諤・縺ォ險 縺」縺ヲ縺阪◆縺ョ縺 縲ゅ■繧峨→逶励∩隕九 √◎縺□縺ュ縲√→蠖シ縺ッ縺≧縲ゅ§繧≠荳 邱偵□縲√→蜈ア諢溘r蜿」縺ォ縺励 √〒繧ゆソコ莉・荳翫□縺ュ縲√→蜷舌″譽※繧九h縺↓險 闡峨r鄂ョ縺上 ∝縺九k繧薙□縲∽シシ縺ヲ繧九°繧峨 √&縺ソ縺励>縺ュ縲√%繧薙↑縺ォ縺輔∩縺励>豌怜縺ォ縺ェ繧九縺九 蜷医縺>縺 縺代逕キ縺ィ蟇昴k縺ィ縲∽ココ逕溘r隕九▽繧∫峩縺励※縺励∪縺◎縺□縲∫塙縺後◎縺泙邯吶℃譌ゥ縺ォ縺▲縺溘≠縺ィ縺ォ鮠サ縺ァ隨代≧縲り蝌イ縺 繧阪≧縲ょスシ縺ッ驢偵a縺溽岼縺ァ辣呵拷繧偵縺九☆逕キ繧定ヲ九k縲ゆシシ縺ヲ繧銀 ヲ莨シ縺ヲ繧九→縺ッ諤昴o縺ェ縺九▲縺溘↑縲∫闕峨r蜷ク縺%縺ィ縺ォ髮クュ縺励※縺k逕キ縺ョ阮ャ謖 ∵欠霈ェ縺ォ逶ョ縺後>縺阪 ∫オ仙ゥ壹@縺ヲ繧九縺九↑縲√◎繧後→繧り蛻霄ォ縺ィ縲√→諤昴≧縲ゅd縺後※蜿励¢縺 グリーンの瞳がエメラルドのごとくスパークを放っている。

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俺はケイオトに命を捧げたのだ!

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リビングに戻ると葉月が、こんなので私、良い彼氏できると思う? ねぇどうなの? と慣れない服装に対するストレスが爆発している、チャラい男しか寄ってこないと思って私これまでこの道歩まなかったの! 紗月が、だからお姉ちゃん、戦闘服だって、気持ち強くなるでしょ、ねぇ、折原先生――と五センチほど座っていた位置を縮め――末有くんから聞いたの、先生が初めて私の部屋を見たとき、拡散スキル高いとか言ったんでしょ、それってどういう意味? 教えて。そう聞かれ、あれ、そんなこと言ったかな、覚えてない、とジョークを縺*讓ェ縺溘o繧翫≠縺」縺ヲ逶ク謇九′縺ゥ縺@縺ヲ繧ょ泣襍キ縺励↑縺上※荳咲匱縺ァ邨ゅo縺」縺溘%縺ィ縺ッ菴募コヲ繧ゅ≠繧九@縲∝・ウ縺ィ繝帙ユ繝ォ縺ォ蜈・繧翫縺励◆縺檎オ仙ア 陦檎ぜ縺ォ閾ウ繧峨↑縺九▲縺溘%縺ィ繧ょー代↑縺九i縺壹≠繧九 ゅ□縺後◎繧後i繧ょ性繧√※縺吶∋縺ヲ蝨ー邯壹″縺ィ縺励※縺ョ繝昴Ν繝弱げ繝ゥ繝輔ぅ縺 縲ら嶌諤ァ縺梧が縺上※縺贋コ偵>縺▽縺セ縺ァ邨後▲縺ヲ繧ゅヮ繝ェ縺阪l縺ェ縺∪縺セ譎る俣縺 縺代′縺吶℃縺ヲ縺¥縺薙→繧ゅ≠繧九 ら援荳 譁ケ縺後≠縺」縺ィ縺≧髢薙↓貅 雜ウ縺励※縺励∪縺ョ九j縺ョ譎る俣縺後◆縺 縺◆縺壹i縺ォ豬√l縺ヲ縺¥縺薙→繧ゅ≠繧九 ゅ□縺後◎繧後襍キ縺阪※髮サ霆翫↓荵励▲縺ヲ謨ー蜊∝邨後▲縺溘縺。縺ォ蟒カ縲サ穂コ九↓譏弱¢證ョ繧後◆縺ゅ→縺ァ隱ー縺九→關ス縺。縺ゅ>讌ス縺励¥繧▲縺ヲ縺セ縺滓焚蜊∝髮サ霆翫↓荵励k繧医≧縺ェ莠コ逕溘→縺ェ繧薙i螟ァ蟾ョ縺ェ縺 ゆク翫′縺」縺ヲ繧九→縺阪b縺ゅl縺ー荳九′縺」縺ヲ縺k縺薙→繧ゅ≠縺」縺ヲ縺ゥ縺。繧峨°縺碁聞縺冗カ壹¥縺薙→繧ゅ≠繧九□縺代豌ク驕 縺 縲ら黄隱槭↑縺ゥ譛帙∪縺ェ縺→縺≧縺薙→縲ょスシ縺ッ逕キ縺ァ縺ゅk縺九i縲∬繧峨陦 繧貞セ御ク悶∈谿九◎縺→縺≧豌励b縺ェ縺°繧峨 ∽ク牙香繧定カ翫∴縺ヲ繧ょー壹%繧後′縺壹▲縺ィ邯壹¥縺ィ諤昴>邯壹¢縺ヲ縺k縲ゅが繝ッ繝募ウカ縺ォ菴上s縺ァ縺◆縺ィ縺阪險俶縺ョ谿狗縺瑚┻陬上↓豬√l縲√≠縺ョ繧イ繧、繝薙繝√〒遐よオ懊↓謇薙■蟇○繧区ウ「縺ョ繧医≧縺ォ縲∵ア玲サイ繧 縲∫峩蟆律蜈峨逵滉ク九〒縲ゅ↑縺ォ縺九→縺ヲ繧ょ、ァ縺阪↑隕九∴縺ェ縺黄隱槭蜀Κ縺ァ蜍倬&縺↓縺吶℃縺ェ縺ーク驕 繧堤函縺阪※縺k縺ォ縺吶℃縺ェ縺縺ァ縺ッ縲√→縲ゅ≠縺ョ螟ェ髯ス縺ッ縲√ン繝が繧ォ繝。繝ゥ縺ョ繝ャ繝ウ繧コ縺ァ縲∝スシ縺ッ縲∽コ句ョ溘 ∵悽蠖薙↓繝昴Ν繝弱げ繝ゥ繝輔ぅ縺ョ荳 逋サ蝣エ莠コ迚ゥ縺ォ縺吶℃縺ェ縺縺ァ縺ッ縲√→縲 ファン心理満載の紗月からようやく逃れた作家が大橋と同じベージュのソファに腰掛ける。しばらくオワフの住居の会話を続ける二人をショッキングピンクの大きなクッションが乗せられたベッドを背凭れにした青年がちらちらと見る。大橋が、新作小説はできたの? と聞く。まあね。大橋が黒真珠の如き瞳の作家を見つめる。俺は、きみが別次元から来たって話は信じることにした、少し考えたけどさ――間を置き――面白い話を聞かせてやるよ、初めて会ったとき、きみらは苦笑してたけど、この世界は滅びかけてるって噂が囁かれるようになった、その噂の発端は、大阪に突如現れた超高層建造物と、大阪湾での火柱、そして天使の落下現象だ、天使はまぁいい、この世界では実際初めてのことじゃないから、きみには理解しづらいだろうけど、でもこれらのことときみらを別次元から移動させたっていう球体の存在はおそらく繋がっている、ある一人の男が結果的に招き起こしたことだと思う、それに関してある場所のことが気になってて、今度一緒にどうかな。そして、左手薬指のスターリングシルバーの指輪を磨く。作家が、その様を見つめながら沈黙を保つ。今聞かされた台詞を一言一句記憶しているため、反芻し、この偶然会ったにすぎないと思っていた男が何を言ったのか、考える。――面白い話を聞かせてやるよ――初めて会ったとき――きみらは苦笑してたけど――この世界は滅びかけてるって噂が囁かれるようになった――その噂の発端は――大阪に突如現れた超高層建造物と――大阪湾での火柱――そして天使の落下現象だ――天使はまぁいい――この世界では実際初めてのことじゃないから――きみには理解しづらいだろうけど――でもこれらのことときみらを別次元から移動させたっていう球体の存在はおそらく繋がっている――ある一人の男が結果的に招き起こしたことだと思う――それに関してある場所のことが気になってて――今度一緒にどうかな――。作家と青年の目があい、青年が立ち上がりソファに移動する。姉妹の邪魔が入るが、その声はノーシスのもとで一時的に消去される。あのさ、大橋くん、江口由希って名前に心当たりあるの? 大橋がちらと青年を見て、昔、そう呼ばれてたな、と答える。じゃあ、ミラーボーイズは? それは知らない。きみが何かを知っているのなら想像力を駆使してみなよ。大橋が、青年の冷たい瞳の奥を、睨むように見る。作家が、大橋正和、きみは何者だ? と単刀直入に聞くが、俺は何者でもない、ただきみらに関係ありそうな小説を昔読んだだけだ、折原輝弥、きみと違って記憶力は完璧じゃないからさ、何年も前に読んだ小説だから霧のなかのような話だけどさ。それに対し、作家の勘だが、俺が今立ってる位置は、きっととてつもなく複雑なラビリンスの、ほんの一角にすぎないだろう、と呟く。

頭を思い切りはたかれ、青年の、ノーシスの結界がとかれる。紗月が、なに内緒話に花咲かせてんのよ、折原先生、本棚見てくれた? 先生の本、私、集めてるの、感謝してるの。酒で顔の赤い女に、青年が、理解して読めてんの? とちゃちゃを入れる。しおらしく、正直あんまり分からないよ、でも、世界が広がるの、それって素敵なことじゃない? 青年が申し訳なさそうに、そうだね、という。作家が、好意的に鼻で笑う。葉月は室内植物の脇で寝ている。紗月が突然泣き始める。私、大橋くんに出会えて良かった、今初めて思ったよ、だって先生と少し親しくなれたの大橋くんのお陰だよ、もっと一緒にいようね、恋とかしてないけど、約束して。突然名前を呼ばれて指輪を磨いていた大橋が戸惑いがちに、ああ、いいけど、酔いすぎじゃね、といって側に近寄り、肩を抱き寄せ、このまま寝なよ、という。それから、この女に出会ったとき、世間では世界が滅ぶって噂が流れだしててさ、俺は、滅ぶことがどうしても頭でしか理解できなかった、折原輝弥、きみに聞きたい、物理的に世界が終わる、それは何を意味するんだ。作家が静かに間を置いていう、魂は、形而上にあるから関係ない、地球が消滅し意志を受け継ぐ者すらいなくなるとしても、俺は新しい世界を創造し、そこに全てを解き放つだけだ、そのような態度に、何の意味があるのかと問う者はいるだろう、だが、俺には、その問い自体分からない、とても小さな問いだ、直感的にだが、それは取るに足らない問いのように思う。大橋がいう、成程、アレだ、ただひたすら、理屈もなく強いってわけだ、そこんところは、むしろ理解できる、末有くんも、そうなの?

だが作家はそのとき違うことを考えている。明日にしよう。

ずっと話を聞いていた青年は、当時の記憶に半身飲まれ、作家も大橋も、かつて視ていた風景にいなかった人間たちだ、そして、かつて、姉妹との距離ができてからの自らの日々の断片。蠖シ縲∝、ァ讖区ュ」蜥後′逕溘∪繧後◆縺ョ縺ッ譏ュ蜥悟縲ケエ縲∫羅髯「縺ョ謇 蝨ィ蝨ー縺ッ髱呈」ョ縺 縺」縺溘′辷カ縺ョ霆「蜍、縺ョ螟壹&縺九i譌・譛ャ蜷慍繧定サ「縲→縺励 ∝、ァ蟄ヲ縺ッ譚ア莠ャ驛ス蜀〒縺昴l莉・髯堺ク 蠢懊縺ィ縺薙m豎 陲九↓蟶ー繧句 エ謇 繧呈戟縺」縺ヲ縺k縲らカ壹¥霆「譬。縺九i繧ッ繝ゥ繧ケ繝。繧、繝医→豺ア縺ケ九′繧翫r謖√※縺ェ縺九▲縺溘◆繧 柔らかい ∽ク 莠コ縺ァ驕翫逋悶′縺ァ縺阪※縺励∪縺サ「蜍、縺ォ莨エ縺律縲°繧臥峡迚ケ縺ョ閠∴譁ケ繧堤ッ峨″縺ゅ£縺滉ク。隕ェ縺ョ辟。雋キスだけで終わった女ャ莉サ縺ェ謇区叛縺玲婿縺 縺」縺溘縺九b縺励l縺ェ縺′隕ェ險ア繧帝屬繧後k髫帙↓蟄ヲ雋サ縺ィ繝槭Φ繧キ繝ァ繝ウ縺ョ螳カ雉r縺 温かく 昴l縺槭l蝗帛ケエ縺カ繧灘女縺代→縺」縺ヲ縺※蠢ヲ√↑逕滓エサ雋サ縺ッ遞ョ縲繝舌う繝医〒驕ゥ蠖薙↓遞シ縺〒縺◆縺後d縺後※蜿矩#縺ィ繝ォ繝シ繝 繧キ繧ァ繧「縺吶k縺薙→縺ァ蜃コ縺ヲ縺¥縺ッ縺壹□縺」縺溘♀驥代r逕滓エサ雋サ縺ォ蝗槭○繧九h縺↓縺ェ繧翫 √≠繧九→縺この部屋でかつて死んだ阪°繧臥塙逶ク謇九↓縺九i縺 繧貞」イ繧九h縺↓縺ェ繧九 よ擲莠ャ縺ォ縺ァ縺ヲ縺上k縺セ縺ァ諱倶ココ縺ッ縺吶∋本当になぜ紗月はそんな部屋を自らの住処に縺ヲ螂ウ縺ァ縲∽ク 莠コ證ョ繧峨@繧偵縺倥a譛 蛻昴↓螟ァ蟄ヲ縺ァ縺、縺阪≠縺」縺溽嶌謇九b蜻顔區縺励※縺阪◆螂ウ縺 縺」 葉月の存在は当時魔術の為の生贄だったのではないか 縺溘′縲√◎縺ョ諱九r邨ゅ∴縺滄 °繧芽。励r縺オ繧峨繧峨☆繧九h縺↓縺ェ何故俺は死んだ繧頑キア縺 エ謇 縺ク豐医迚ケ諤ァ縺九i縺狗塙縺檎塙縺ィ蜃コ莨壹≧縺溘a縺ョどのように死んだ蝣エ謇 繧堤衍繧翫 √◎縺薙〒諤ァ逧↑荳 譛滉ク 莨壹r郢ー繧願ソ斐☆繧医≧縺ォ縺ェ繧九 ょ、ァ蟄ヲ縺ァ縺ッ逕キ螂ウ遉セ莨壹□縺後繝ゥ繧、繝吶繝医〒縺ッ逕キ逕キ遉セ莨壹↓邏帙l霎シ繧 讖滉シ壹′蠅励∴縲√ロ繝ヨ謗・邯壹r縺励※繧ゅご繧、縺ョ蜃コ莨壹>邉サ謗イ遉コ譚ソ縺ー縺九j縺ァ縲∫衍繧翫≠縺 白い 魂がひびわれ剥がれ落ちていく 」縺溽塙縺溘■縺ョ霆翫蜉ゥ謇句クュ縺ォ蠎ァ繧顔ィョ縲繝ぅ繝シ繝励↑蝣エ謇 繧呈蕗縺医※繧ゅi縺」縺溘□繧阪≧縲ゅ◎縺励※縲∝香荵昴蜀ャ縲∵蕗螳、繧貞縺ヲ繧ィ繝ャ繝吶繧ソ繝シ縺ォ荵励m縺→縺励◆縺ィ縺阪 ∝スシ縺ッ蜷後§繧シ繝溘〒遏・繧翫≠縺」縺溽塙縺悟縺ォ遶九▲連続していた人生の最終局面で通常なら死 そして無 延々と そして終わり 最後のページだ それら すべてをも生贄と 縺ヲ縺◆縺薙→縺ォ豌励▼縺上 ゅ◎縺ョ逕キ縺ョ蟾ヲ謇玖脈謖↓縺ッ陋′雎。繧峨l縺滓欠霈ェ縺後繧√i繧後※縺※縲搨螟ゥ縺ョ髴ケ髱ゅ→縺≧險 闡峨r遏・縺」縺ヲ繧九h縺ェ縲√→縲∫ェ∫┯隧ア縺励°縺代i繧後◆縺ョ縺 縲ゅ◎縺ョ逕キ縺ョ蜷榊燕普通の感覚でいえば次元を越えるなど相当の高等魔術でありそんなものがそうやすやすと出来るもんじゃない 生贄が必要だ、自らの生と引き換えに その次は当然、誰かの生とひきかえに繧る。斐b譛 譌ゥ諤昴>縺 縺吶%縺ィ縺後〒縺阪↑縺′縲∝スシ縺ォ縺ィ縺」縺ヲ蛻昴a縺ヲ縺ョ蜿矩#縺ィ蜻シ縺ケ繧狗塙縺ァ縺ゅ▲縺溘@縲√%縺ョ逕キ縺ィ蜃コ莨壹▲縺溘%縺ィ縺ァ螟ァ縺阪¥莠コ逕溘′螟峨o縺」縺溘縺 縲ゅ◆縺 縺励 √◎縺ョ螟峨o縺」縺溘%縺ィ縺ィ逕キ縺後←縺>縺 ァ譬シ縺ョ閠□縺」縺溘縺九→縺ョ髢薙↓豺ア縺オ舌縺、縺阪縺ェ縺上 ∬ヲェ縺励¥縺ッ縺ェ縺」縺溘′繧シ繝溘縺ィ縺阪↓縺溘o縺b縺ェ縺ゥア繧偵@縺ヲ縺◆縺ー縺九j縺ァ縲√□縺後 √≠繧九→縺阪◎縺ョ逕キ縺九i謳コ蟶ッ髮サ隧ア縺ォ蝗ス髫幃崕隧ア縺後°縺九▲縺ヲ縺阪◆縺ィ縺阪 ∵ いったい誰を 今度は キア縺剰 ∴繧九%縺ィ繧ゅ↑縺丞蜷代>縺溘←縺薙m縺句挨蜷咲セゥ繧剃スソ縺 ∝スシ縺ッ縺昴縺セ縺セ縺励繧峨¥譌・譛ャ縺ク蟶ー繧阪≧縺ィ繧ゅ¸ýͳ´õ¤ äÆ̾ ¤Å¤±¤é¤ì¤ë¤ó¤Ç¤¹¡£¡Ä¡Ä¤É¤¦¤·¤Æ¤³¤³¤Ë½»¤ó¤Ç¤ë¤ó¤Ç¤¹¤«¡© ͧ¿Í¤¬ ±Ê½»¸¢¤ òÅö¤Æ¤Æ¤ Í¡¢»È¤ï¤ ʤ¤¤«¤é ¤Ã¤Æ¤³¤ ȤÇÍøÍÑ ¤µ¤»¤ Ƥâ¤é¤Ã ¤Æ¤ 롣û ¤¤Î¹¹Ô ¤Î¤Ä¤â¤ ê¤À¤Ã¤ ¿¤± ¤Éµ¤¤ ËÆþ¤Ã ¤¿¤ó¤ À¡£´Ä¶­¤Ï¿ÍÀ ¸¤òÊÑ ¤¨¤ë ¡£¤½¤ì ¤À¤ ±¤Î¤³¤È ¡£¤³ ¤Î´ Ķ­ ˤ ¿¤Þ¤ ¿¤ Þ¤­¤¿¤³ ¤È¤¬ ±¿Ì¿¤ Ǥ¢¤ ê¡¢¤ª¤ ì¤Ï²á µî¤ò´þ¤Æ ¤¿¡£¤½ ¤ì¤À¤ ±¤ À¤è¡ £¿¼¤¤°ÕÌ£¤ Ï¤Ê ¤¤¡£ ¤ À¤ ±¤É ¡¢¤¢¤Î ´ö¤ Ĥ«¤Î· ÈÂÓ ¡Ä¡£ ¤½¤í¤ ½¤íÍÛ¤ âÄÀ¤à ¤·¡¢ ͼ¿©¤ òºî ¤ë¤ è¡£°ì½ï ¤Ë¿©¤ Ù¤ è¤Ã¤« ¡£¤ ½¤·¤Æ\Ð\¹\ 롼\ à¤ÇÍ· ¤Ü¤¦¤è ¡£@縺ェ縺九▲縺溘□繧阪≧縲ょスシ縺ォ隕九∴繧倶ク也阜縺ッ荳 蛻豕「縺ョ縺ェ縺ヲ区ク。縺咎剞繧翫蟷ウ蝮ヲ縺ェ豬キ縺 縲ょ叙繧後◎縺↑縺ィ縺阪↓蜿悶k諢滓 ァ縺 縺題ご縺ヲ縺ヲ縺ゅ→縺ッ縺ゅi縺九§繧∵戟縺溘&繧後◆繧ュ繝」繝す繝・繧ォ繝シ繝峨r菴ソ縺℃縺斐☆縲よ坩繧峨@縺ヲ縺¢繧九↑繧峨 ∽サ悶↓菴輔′縺k縺 繧阪≧縲ょュ伜惠險シ譏弱↓闊亥袖縺後↑縺 ょ、懊′譖エ縺代◆郢∬庄陦励〒縺ッ螟壹¥縺ョ閠◆縺。縺後お繝阪Ν繧ョ繝シ繧せ繝医Ξ繧ケ繧呈戟縺ヲ菴吶@縺ヲ縺k縺溘a縺ォ驥代r謇輔▲縺ヲ蠢ヲ√〒縺ッ縺ェ縺九▲縺溘°繧ゅ@繧後↑縺黄莠九r螟夐㍼縺ォ鞫ょ叙縺励 ∝莨

緑の、光彩

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青年がスマートフォン片手に発信音をずっと聞いている。そこは――西口公園の真横に乙女ロードがあるような――西口と東口が九十度回転したような、池袋だ――青年の隣で作家の男がいう、大橋を待つのはやめて、俺たちだけで入るか? 二人の前に生気のない五階建てのビルがある。今朝大橋が言っていた住所を再確認し、青年が、この中に導きたかったんだろうな、と思う。作家が返答を待つことなくノブに手をかけると鍵がかかっていないらしく、ドアが開き、ひんやりとした闇に、外の光が射す。短い通路があり、左右に二つずつ部屋があり、突き当りのエレベーターは動かないため、上がるなら階段を使うしかない。どの部屋もがらんどうで、この建物そのものが雑に扱われてきたかのような冷たさに満ちている。青年のスマートフォンによる懐中電灯アプリによって照らされる階段を上り二階へきたとき作家がいう、今朝、きみらと一旦別れてから、この住所の位置にかつて何があったか調べた――少しの沈黙――ネットには何も情報がなかったが、出版社の知人が教えてくれた、かつてここはモデル事務所だったそうだ。青年が銀色がかった短いグレーの髪に触れながら、本当はそんなことは別にどうでもいいかのような坦々とした声で、グラビアアイドルか何かの? と聞く。いや、AV業界だ、ただこの事務所は犯罪組織と呼んだ方が正確ともいえる制作会社と繋がっていて、幼い男女を誘拐しては何人も海外へ飛ばし殺していたようだ。青年はそれを聞き終わる前に、心を真空状態にし、緑色の視線で作家を見る、それは面白いネタなのか。作家が、五つ指輪の嵌められている方の手で額に手をやり、その製作会社の消失と、この事務所の解体は同時期だったようだが、と、通路から室内へドアを開き、警察がここを見つけるより前にすべての物品は闇へ運びだされ迷宮があとに残ったんだ、この件を知る者に可能な限り連絡をとってもらったが、結局きみや来なかった大橋とここで待ち合わせる時間までかかってしまったし、大した情報も得られなかった、それと、大橋はかつてハワイに住んでたから、気になってその辺りも追求したが――作家が話しながら三階への階段へ――オワフ近隣の島で撮影されたとおぼしきDVDはあったようだ。青年は、三階でも小部屋のドアを一つずつ開いては通路から覗き見る作家の単調な背中を見続けて、この男は、本当なら俺がもっと関心を持つべき現場で、冷静に事実を突き止めようとしている、と思う。その直後だ、作家が、唾を飲み、振り返り、青年を見る。揺らいだ冷静さを取り戻すための癖なのか、作家がべらべらと語りだす、俺は一度目にしたり耳にしたりした言葉を永久に忘れないから、応用として空間自体、本を読むように愉しむことができる、とはいえ、なんとなくだ、別にその空間の過去を垣間見るというような、いわゆる、超能力めいたことができるわけじゃない、なんとなくだ、だが、末有、この部屋をどう思う?蠖シ縺ョ莠コ逕溘r豎コ螳壹▼縺代◆縺ョ縺ッ繧繧翫繝ォ繝弱げ繝ゥ繝輔ぅ縺ォ縺、縺※蜿」縺ォ縺励◆逕キ縺ョ霆翫↓荵励▲縺溘→縺阪□縺」縺溘°繧ゅ@繧後↑縺 りサ「蜍、縺ォ縺、縺阪≠繧上&繧瑚サ「縲→縺励↑縺後i縺昴蜷慍縺ァ螂ウ縺ョ諱倶ココ繧呈戟縺」縺溘j蛻・繧後◆繧翫@縺、縺、縺壹▲縺ィ繧ゅd繧ゅd縺ィ縺励※縺◆譛ャ雉ェ縺御ク 譁ケ蜷代r蜷代>縺ヲ襍ー繧翫縺倥a縺溘縺 縲ゅ◎繧後繧「繧、繝Φ繝ぅ繝ぅ縺ョ遒コ遶九→縺≧縺ョ縺ィ縺ッ驕輔≧縲ゅ縺励m縲√い繧、繝Φ繝ぅ繝ぅ縺ョ遒コ遶九′豌ク荵↓蟆√§繧峨l縺溘→縺▲縺ヲ縺>縺 繧阪≧縲よ怙譌ゥ蠖シ縺ッ螟ァ讖区ュ」蜥後〒縺ッ縺ェ縺上↑繧頑ョ画蕗閠→縺ェ繧九∋縺乗律縲r譽※縺ヲ縺k縲ゆソ。莉ー縺ィ縺≧繧医j縲∝次逅噪辟。逾櫁ォ悶 √f縺医↓迚ゥ隱槭′諡貞凄縺輔l繧九 ら塙譬ケ縺ッ蛻コ豼 縺輔l繧後蜍▽讖溯縺ョ繧医≧縺ォ繧キ繝ウ繝励Ν縺ェ繧ゅ繧呈戟縺。縺ゅo縺帙※縺k縺後 √♀縺昴i縺上 撼菫。莉ー縺ィ縺ョ蜷井ク 縺瑚ヲ九i繧後◆縺ィ縺阪↓蠖シ縺ョ繧ィ繝ュ繧ケ縺碁ォ倥∪繧九 ゆク 險 縺ァ險 縺医縲∫函縺ェ縺ゥ縲√←縺〒繧ゅ>縺縺 縲ら函縺ォ諢丞袖繧剃サ伜刈縺輔○繧九↑縺ゥ諢壹°縺励>縺薙→縺 縺ィ縺輔∴辟。諢剰ュ倅ク九〒縺ッ縺□縺※縺k縺ョ縺九b縺励l縺ェ縺 ゅ□縺九i縺ゅk縺ィ縺榊、「繧定ヲ九◆縺ョ縺 縲よオキ蟯ク縺ョ縲り繧峨蜀吶@邨オ縺ョ繧医≧縺ェ豁サ菴薙→繧ウ繝医r陦後≧繧医≧縺ェ縲ゅ◎繧後螂ウ縺 縺」縺溘°繧ゅ@繧後↑縺′縲∫エ占ァ」縺代逕キ縺ァ縺ゅ▲縺ヲ繧よァ九o縺ェ縺 ゅ◆縺 豕「謇薙■髫帙〒縲√◆縺 縺ァ縺輔∴蜀キ縺溘>豁サ菴薙′縺輔i縺ォ蜀キ縺医※縺¥縲ゅ◎繧後↓繧 縺輔⊂繧翫▽縺上h縺↓繧サ繝け繧ケ繧偵@縺ヲ縺k窶補 慕函縺ォ險伜捷逧↑諢丞袖繧剃ク弱∴繧九↑繧薙※≫ 補 戊穐遨コ讖溘′鬆ュ荳翫〒蠅懆誠縺励◆縺九b縺励l縺ェ縺 ゅヰ繧ケ繝ォ繝シ繝 縺ァ譎る俣縺梧ュ「縺セ繧翫繧雁将繧薙□縺九b縺励l縺ェ縺 りアェ髮ィ縺ョ譌・縺ォ繧ャ繝シ繝峨Ξ繝シ繝ォ繧剃ケ励j雜翫∴縺ヲ鬟帙縺 縺励◆霆翫°繧臥ャ代∩繧呈オョ縺九∋騾吶>縺 縺励◆縺九b縺励l縺ェ縺 ょ哨隲悶′縺ゅ▲縺溘縺九 ∬ィ俶縺碁□縺 ゅb縺励°縺吶l縺ー縲∵アコ螳夂噪縺ォ蠢∮縺ォ驥倥′謇薙■縺、縺代i繧後◆縺ョ縺九b縺励l縺ェ縺 ゅ←縺輔←縺輔→螟ゥ縺九i豁サ菴薙′髯阪▲縺ヲ縺阪◆縺九b縺励l縺ェ縺 り、焚縺ョ閾ェ蛻霄ォ縺ィ谿コ縺励≠縺」縺溘縺九b縺励l縺ェ縺 ゅ◎縺>縺」縺溷、「縺九i逶ョ縺瑚ヲ壹a縺ヲ鬘阪↓謇九r繧j縺オ繧峨▽縺阪↑縺後i蜈ィ霄ォ豎励〒縺ウ縺」縺励g繧翫□縺」縺溘◆繧√す繝」繝ッ繝シ繧呈オエ縺ウ縺ォ縺¥縲よ欠霈ェ繧堤」ィ縺薙≧縺ィ縺吶k縺瑚寐縺瑚ア。繧峨l縺溘◎繧後縺▽縺 縺」縺溘°隱ー縺九↓縺ゅ£縺ヲ縺励∪縺」縺溘縺 縲ょ・ウ縺悟辟カ縺上l縺溷酔遞ョ縺ョ謖シェ縺後≠縺」縺溘°繧ゅ→蠑輔″蜃コ縺励r縺ゅ¢縺ヲ縺ソ縺溘′縺昴l繧貞キヲ謇玖脈謖↓縺ッ繧√h縺→縺≧豌励↓縺ェ繧後↑縺 ゅ縺ゥ縺ー怜縺 縲ゅ@縺九@縲∫ケー繧願ソ斐&繧後◆蠑輔▲雜翫@縺ョ縺ェ縺九〒繧 縺励m閧イ縺ヲ繧峨l縺ェ縺九▲縺溘 ∵悽雉ェ縺昴繧ゅ縺ァ縺ゅk縺ョ縺九b縺励l縺ェ縺 ゆク。隕ェ縺悟、ォ蟀ヲ逕滓エサ繧剃サ翫b騾√▲縺ヲ縺k縺ョ縺九☆繧臥衍繧峨↑縺 ――その部屋を見た青年は、そこに血の匂いを嗅ぎつける。だが、それよりも、もっと別の何か、彼自身と共鳴しあう何かがこの室内にあることを得る。それで口にする、ここで、次元の移動が行われた、そういう面影がある。作家が、驚き、そういう話なのか、という。青年がノーシスに包まれながら室内に踏み入り、とてもリアルな形跡だ、という、きっと、次元移動を初めて行った者、彼自身がここにいたんだ。ドアに手を置いたままの作家が、室内の闇と手元の明かりに溶け込んでいく青年の影をじっと見つめる。脳裏で咄嗟に、面白いやつだ、そんな感情がよぎる。この現場ではもっと恐ろしい何かが起こっていただろう、だが、そんなことなどこの男にはどうでもいいわけだ。

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五階には倉庫があり、別の部屋には大きな窓がある。改めて大橋をスマートフォンで呼び出そうとするが応答はない。あいつは、ここで何があったか知ってるんだろ、と青年がいう。ある一人の男が結果的に招き起こしたことだ、と言ってたな、作家が、大阪の異変も、俺たちがこの世界へ来るゲートの役割を果たした漆黒の球体も、一人の男によるものだと、そういえば、昨晩きみが大橋に尋ねた名前、江口由希とは何だ? 大きな窓から昼間の空を見上げ、分からない、蠖シ縺ッ縲∬脈謖 ュ泌鴨縺ョ遘倥a繧峨l縺ヲ縺↑縺せ繧ソ繝シ繝ェ繝ウ繧ー繧キ繝ォ繝舌縺ョ謖シェ繧堤」ィ縺上 縺九▽縺ヲ縺ョ繧ェ繝ッ繝募ウカ縺ァ縺ョ荳 騾」縺ョ蜃コ譚・莠九↑縺ゥ縲∝スシ縺ォ縺ィ縺」縺ヲ縺ゅ▲縺ヲ繧ゅ↑縺上※繧ょ酔縺倥□縲ゅ↑縺ォ繧ょ、峨o繧峨↑縺
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作家が先の部屋で感じ取ったのは殺戮の光景だ。人が人を殺したのではない。なにか未知の現象によって幾らかの人間が焼き消えただろう。生気のない五階建てのビルをあとにし、植物の多いカフェで野菜のキッシュをつまみながら、犯罪組織と呼んだ方が正確ともいえる制作会社を神威という男が追っていたが行方不明らしい、親交のあったとある彫師と明日会う予定でいる、という、でもね、関心があるのはあくまでも、どうしてきみという人間を経て次元を越えて俺はこの世界にやってきたのかということだ、神の意志という話じゃない、俺は理神論者だから、きみはさっきの建物で〈ここで、次元の移動が行われた〉といったな、きみ以前の発現だ、昨晩大橋が〈ある一人の男が結果的に招き起こした〉といってたな、大橋は多くのことを知っていて、あの建物に誘導しておきながら現れなかった、どう思う。洗浄液を使い、人差し指の腹で前後同一方向に表と裏を二十二回ずつこすり洗いし終えたグリーンのコンタクトレンズを瞳につけて青年が、俺たちは、大橋のことをたいして知ろうとしなかった、何度か会った紗月の話を今思いだそうとしてる、昔、俺が知ってた紗月はもっと野暮ったかったんだ、きみは、彼女の部屋を初めて見たとき、拡散スキルの高い女だといった、彼女は、きみの小説の感想で、世界が広がるといってたな、葉月は大橋と紗月がお似合いだといってた、二人は似てるといってた、紗月は大橋の彼女じゃないらしい。作家がいう、大橋はしょっちゅう指輪を磨いてるが、紗月はたびたびマニュキアの手入れをしてたな。そうなの、よく見てるな。俺たちは大橋を注意しなさすぎた、また会えるのか、もう二度と会えない気もする。青年が、紗月と今後も会うだろうし、それはないだろ、というが、表情が陰る。紗月への着信も繋がらない。狭い世界だ、と作家が口にする、俺は、きみを経てこの世界に来たばかりの、いわば来訪者だ、大橋と、紗月と葉月、ただそれだけの交流で、それも収入源のための業界活動に時間を取られていてあまり深く接しなかった、おそらくは、実際は大橋との交流は続くだろう、大橋がかつて住んでいたというオワフの住居に住まわせてもらう予定だからな、だが、その大橋は、もうそれだけの関係である大橋のような気がしてならない。青年は、そう口にする作家の顔をじっと見つめる。

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池袋西口公園を歩く二人、その頭上、月が四つ浮かんでいる。それはこの世界では日常的な光景だ。

作家がいう、俺はかつて、特殊な人生、それは、弱き者の叫びだ、と考えていた、今、俺は、きみたちに巻き込まれ、特殊な人生を歩みだしているように思う、そして、笑う。

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作家が待つ、大手町のホテル内にある緑あふれるカフェに、紗月が現れる。急いで準備して出てきたような表情だ。
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先生! 遅くなってごめんなさい。まさか二人で会うなんて。と微笑。お仕事が忙しくてなかなか予定が空けられなかったの。
ああ。気にしてない。とウェイターを呼ぶ。あのパーティーの翌日、大橋くん、どうしてた?
え? あの日、なんかね、大橋くんに熱海行こうって話ふられて。と注文をする。
俺や未有のことをなにか言ってなかった?
とくに何も。赤のサンダル、黒を基調とした上下にライトグレーのナチュラルなニットカーデはゆったりとしたドロップショルダーのドルマンスリーブ、髪も以前より若干色を落としている。お金はいいって言ってくれて洋風の良い部屋に泊まったんだけど、建築家だかがデザインしたっていう海に面した壁一面窓のきれいなとこ、素敵だったよ。でも、大橋くんずっと物思いに耽ってたから、どうしようと思って、少し考えてね、明かりを少し落として、服とか全部脱いで、窓際を、歩いてみたの。女がちらと作家の顔を覗き込む。
女に視線をやり、どうして? という。
彼、ポルノグラフィで人生を埋めることが存在理由だから。
そういえば、最初に出会い泊まらせてもらったとき、きみら二人は、ベッドで堂々とセックスしてたな。
焦って顔を赤らめながら、恥ずかしい。大橋くんが落ち込んでるときってさ、物語が干渉してきたときだから。大橋くん、近寄ってきてね、背後から私の肩に触れて首筋にキスしてきた。耳元で、こういうの。人生がね、起承転結のあるような物語にならないよう生きてきたつもりだったのに、振り返ってみれば、物語と呼んでもおかしくない人生だってことに、はっと気づいた、って。ドキドキした。一言一句そういったわけじゃないよ。先生みたいに記憶が確かじゃないから。女が、増々顔を紅潮させていく。
腑に落ちたよ。
え?
あのパーティーの日、俺は大橋にある場所を教えられて行ってきた。先日そこと関連のある人物の知人に会ったんだが、先の人物っていうのが行方不明でね、今はもう無くなってるから教えてもいいと山中のある場所のことを知らされた。その人物が最後に深く関わってた場所で、特殊な性癖を開放させる施設だ。その人物はある犯罪組織を追ってたという。俺は大橋と違う。他人の人生に深く干渉することに対し作家的関心がある。他にも、幾らか調べたが、これは大橋の物語ではない、未有の物語だ。
私、先生に誘われて、ちょっと期待してたのにな。ここ、良い場所だしさ。
きみは、未有がかつて死んだ、いわゆる事故物件で暮らしてる。分かっててそうしたんだろ。
女が顔に手を当てて、もう、色々アウトだったのか、と呟く。
なに?
こないだのパーティー、楽しかったね。
女の服装を見て、柔らかい格好だね。きみは、今わりと幸せなんだよ。
うん。でも、大橋くんとくっついたわけじゃないよ。それはない。
作家が、飲み物に口をつけて、しばし黙り込む。
何の話だった?
俺は今、作家業としてこのホテルで暮らしてる。そこで飲み直す?……面倒でなければ。だが、今知りたいのは、未有の件なんだ。そもそも、彼の死因はなんだ? 両親はどうしてる?
女が静かに事情を話す。

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そう。俺が探偵に向いてるかは分からないが、小説家として生きる前にね、ノンフィクションライターをやってて、最初は天職だと思ったな。ところが、だ、あらゆる他者の言葉に埋め尽くされ、キーを叩いて打つ文字の世界までも他者で埋め尽くされてしまうのは、量を増すごとに苦痛になった、すべての言葉を記憶する。そして、世界は、統合されてないからだ。しかし、世界はクリシェに満ちてるとも思った。いつだってどこでだって、同じ言葉が繰り返されている。それらと自分を切り離したいと思った。俺は、今、ここにない世界を、自らの手で創造したいと思った。
螟ァ讖区ュ」蜥後′縲√◎縺 √→蜀阪豸シ縺励>鬘斐□縺檎椪縺阪↑縺上 ∽ス懷ョカ縺ォ隕也キ壹r、
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母は、いわゆるキャリアウーマンで、いつでも、仕事してたの。父は、私が生まれるより前に仕事やめて、近所で事務所をあげて、なにか怪しいことしてたな。幼少の頃から夫婦喧嘩は日常茶飯事で、私は、お姉ちゃんと抱き合って震えてた。でも、お姉ちゃんの側に未有くんが現れた。今思えばね、今も昔も、お姉ちゃんは、未有くんといるときは元気そうなのよ。だから、感謝してる。でも、当時は、本当に呪ってた。だって、お姉ちゃんを奪われたら私はどうなるの? お姉ちゃんだってそうよ。
復讐なのか。
それだけじゃない。未有くんは、私にとって、恐怖の象徴だった。感謝してるってさっき言ったけど、でも、彼は昔と何も変わってない。髪も短くなって、緑のコンタクトも入れて、チャラくなった感じはするけど、でも結局、今もお姉ちゃんを昔のように飼ってるように感じる。先生が少しだけ未有くんを認めてたし、度々会ってお話してるよ。お姉ちゃんのことが心配だしね。
未有を、そういう視点で見たことはなかったな。沈黙。
大橋くんも知らない私のことを先生は知っちゃったね。
作家が、女を見つめ、じっと考え込む。
なに?
十代の頃、初めてつきあった女のことを思いだした。一言一句、彼女のすべての言葉を今でも覚えてる。だが、あくまでも、言葉だけだ、見たものに対する記憶が完璧というわけじゃない。だが、普通とは違うんだろう。彼女はすべてを記憶して欲しいと願っていたが、当然忘れて欲しいものだってたくさんある。どこで金を得てたのかは知らないが、徐々に整形を始めた。やがて、最初会ったときとは別人のような見た目になった。そして、消息を絶った。何度かいってるが、俺はね、そんなにクレイジーじゃないんだ。だから、シンプルに、俺は、女とつきあってはならないと信じた。とはいえ、世界には色んな女がいる。かつての世界で最後に親しかった編集者と同じ女が、こっちの世界でも編集に携わっていて、俺は近づいた。
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未有の墓の前で一人、作家が佇んでいる。そこには、戒名とともに未有の本名が記されている。

確か会ったばかりのときに、未有は、〈魂を売るといったが、俺はそれをした男を少なくとも一人は知っている。……俺がいた組織を仕切っていた女も、もしかすれば悪魔に魂を売っていたのかもしれない〉と話してたな。あのときは軽く馬鹿にしたが、いったい何を伝えようとしていたのだろう。

だが、と作家は思う、未有こそが売ったと言いたかったのだろう、そして、次元を越える技術をもたらした者もまた、売ったのだ。
悪魔とは、なんだ?

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III




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そのリビングは無垢と呼べるほど白く、レザー素材の白いファンクション機能付のソファがガラス製テーブルを挟んで、浮造りのボルドーパインフローリングの上で、壁際、白いカウンターとの調和を保っている。ドアに隔てられることなく短い通路を経て隣室へ、そこが、作家の仕事部屋だ。白い本棚が角に一つだけ、壁際に白のオフィスデスク、薄型のモニターと切り離されたキーボード、室内スペースの半分以上を大型の作業用テーブルが占めていて、相関図や地図の描かれた紙が散らばっている。彗星の如く現れすでに数冊の小説を本にしたこの作家へのインタビューが持ち込まれたテレビカメラを前に行われている。本がほとんどないのはインターネットの時代だからですかという質問に、文字は一度読めばすべて記憶できるから、部屋に書籍は必要ないと答え、だが、相関図や地図のような視覚に頼った情報への記憶は並みだからこのようになったと付け足す。作業台に散らばる紙はどれも来年刊行される小説の舞台に関する自筆の資料だといい、口にはしないがそれはつまり、この作家が数ヶ月前までいた別次元の世界であると同時に、今いる世界との相違点が記された資料のことだ。左手薬指を除き合計九つの指輪が嵌められていることを指摘されると、待ち望んでいたかのように作家がいう、考えてみればこれは大事な故郷の思い出だね、指輪が好きで作品の取材へ行くたびに購入し、あるときは数百個と持っていた、だが、今はこの九個しかない、ただ、最近新しく貰い物の指輪が一個増えてね、とオーバーレイで蛇の描かれたスターリングシルバーの指輪をとりだし、テレビカメラに突きつける。

これが放送された当日の夕方、大橋正和が、一人の若い男を連れて作家の住むマンションに現れる。
えらく挑発的だな、と大橋がオーバーレイで蛇の描かれたスターリングシルバーの指輪をちらつかせながらいう。
まぁ、入りなよ、横の彼は誰だ?
キュートだろ。
柿本紗月を連れて来るかと思ったが。テレビに映されていたリビングへ案内する。きみと連絡がとれなくなったから、住む場所を作ったんだよ。
テーブルの上に指輪が置かれてある。それを見て大橋は思う、ずっと昔、ハワイにいたとき俺がつけてたやつだ。
紅茶を煎れてきた作家の首元、ミラーが埋め込まれたチョーカーが光る。ミラーボーイズを知ってるか。
いや。
きみがかつて嵌めていたこの指輪が、巡り巡ってミラーボーイズというブランドを立ち上げた高校生の元に行っててね、それが俺のもとに回ってきたんだ。あの、最後に会ったパーティーの日、未有がきみにミラーボーイズについて尋ねただろ、検索すればブランドだとすぐ分かった。次の小説でコラボレーションするのもいいと思ってね、それで、仕事も兼ねて親しい編集者に連絡を取らせたら、訪ねて来いという。それで行ってみたら、ごく普通の高校だ。驚いたことに高校の一室で仕事場を構えている高校生だったわけだ。面白い人間だったが、少し話し仕事の契約を交わしただけで、別れ際にこの指輪をさしだしてきたから、お礼にこのチョーカーを購入した。首元を触る。
そう、と、大橋が連れてきた若い男に軽いキスをする。
このチョーカーだが、魔術品だ。身につければ、誰でも特定のカウンターマジックが使える。
若い男といちゃつくのをやめない。
先日、未有の墓参りをしてきた、作家がいう、未有は一度死んだが、それによって入門したんだ。きみは知ってるんだろう、次元を越える技術をもたらした者もまた、死して、生きているんだな。
大橋は、向き直って、気怠そうに、この話はもうこれが最後だ、確かに死んでいる、自分が作った異生物に殺され、そのときに、例の技術を得る、そういった描写が、あとの方で出てきていた、そういったことが記されている小説を幾度も時空に囚われた者から受けとった、ハワイで、江口由希だったときにね。だが、異生物に殺された男は、それより以前に生きながらにして死に等しい生のかたちを偶然構築したんだ。異生物といったが、俺は、ハワイでソレに一度会っている。女に乗り移ったソレが突然訪ねてきたのさ。よくは分からないし、俺はもう、大橋だし、小説の束も手元にない。相変わらず、この世界はポルノグラフィだし、俺の役割は、あの日、きみに投げ渡したのさ。終了。終わり。
分からない。
俺だってそうさ。
作家が、記憶を集約させていう、すべてを貫くのは、悪魔との契約だ。
大橋が、若い男とのいちゃつきを止めて、唖然とした表情をする。
魂を売り、死ななかった者が、時空を歪めている。未有と、彼が使う技術そのものをもたらした者、その者が超高層建造物だかいうやつを創造したというならあれもまた時空に関する何かなんだろう、そして、未有がかつて所属していた組織NNNNと敵対していた者、そいつに関する情報を聞いている、魔術品としての指輪だ、追っていた神威という男が、行方不明になっている。
神威、ああ、次元を越える技術をもたらしたやつと親しかった男の名だ、向こうの次元のね。
NNNN…
それは知らない。帰るよ。関わりたくない話を聞きすぎた。
きみが、昔つけてた、この指輪…
あげるよ。俺はもう、同じような指輪をつけてるから、それで、のうのうと生きていく。そういって、連れてきた若い男から手を離し、指輪を磨く。よりよく光を反射するようになったシルバーリングがオワフで暮らしていたときに視ていた情景を想起させて、再び横の彼に軽いキスをする。この子、可愛いだろ?
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その女は、名を、児島香という。
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縺溘□縺励
数ヶ月し青年は、すでに離脱したその組織で唯一仲の良かった男と再会するだろう。その男の瞳は緑、短い髪はグレーで銀色がかっている。
久しぶりだ。
青年は驚き、ああ、とだけいい、警戒する。
きみが恋した女、彼女が俺たちの組織NNNNのコアなんだよ。問題は彼女がかつて主従関係を作っていた男が、俺たちの敵対組織のコアの男だったということだ。きみがNNNNから去る幾らか前、多くの暗号が敵対組織によって解読された。彼女はその男の素性を知らず、ただ盲目となり、このこと自体が彼女によって包み隠されていた。俺はある親友に、ある場所に連れていかれ、その男に出会い、これら全貌に気づいた。その男は死を超越し、世界を律し、魔術師とさえ呼ばれることもある。きみはケイオトだろ? 女がそう評していた。なら、その男のことを知りたいだろう。エピソードを、教えてやるよ。俺がいかにその男の律から逃げてこられたのかも。恐怖だ。
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回想の回廊
險俶縲
親友に連れてこられた白い室内には二人の男がいる。片方はデスクトップに向かい眼鏡をかけてキーボードを打ち続けていて、もう片方はソファに腰掛けワイングラスに注がれた液体の動く様を眺めていて、静かで、容姿端麗という言葉ではまるで足りないほど美しい。眼鏡の男が振り向き、彼を一瞥する。美しい男が絶対的な声で静かにいう、数秒前までの過去のきみはもう一切存在しない、おめでとう。奥の部屋へ通され、そこは暗く、奥に一人の中年の男が裸で転がっている。親友が指輪を撫でながらいう、儀式だ、あの男をきみが殺すだけだ。
螟悶髮ィ縺ッ縺▽縺ョ髢薙↓縺九d繧薙〒縺※縲∵凾蛻サ繧ょ、墓婿縺ォ縺輔@縺九°縺」縺ヲ縺k縲らャャ莠秘Κ縲軍EPORTED SPEECH縲阪↓縺★繧檎ケ九′繧九□繧阪≧蟆剰ェャ繧剃コ梧凾髢薙°縺代※蜈ュ遶 縺セ縺ァ荳 豌励↓隱ュ縺ソ邨ゅ∴繧九 ゅ%縺薙〒繧a縺溘縺ッ縲∫岼縺檎夢繧後◆縺ィ縺≧縺ョ繧ゅ≠繧九′縲∫黄隱槭′騾イ螻輔@蟋九a縺溘°繧峨□縲ょスシ縺ッ縲√%縺ョ闡苓 ↓縺ッ逋悶′縺ゅk縲√→諤昴≧縲らャャ荳 驛ィ縲∫ャャ莠碁Κ縲∫ャャ荳蛾Κ縺ィ繧ゅ←繧ゅ ∽コ皮ォ 縺セ縺ァ縺ッ蝨ー驕薙↓荳也阜繧呈ァ狗ッ峨@邯壹¢縺ヲ縺k縺後 ∝遶 縺九i遯∫┯蜉 騾溘☆繧九 ゅ 域価縲峨°繧峨 郁サ「縲峨∈縺ョ豬√l譁ケ縺後さもなくばきみが死ぬ>縺、繧ょ柏遯√↑縺ョ縺ッ縲√d縺ッ繧願送閠′迚ゥ隱槭k縺薙→繧貞・ス縺※縺↑縺°繧峨°繧ゅ@繧後↑縺 ゅ@縺九@縲∫黄隱槭k縺ィ豎コ繧√◆莉・荳翫 √⊇縺ィ繧薙←莉墓婿縺ェ縺励↓縺顔エ據莠九縲郁サ「縲峨r險ュ鄂ョ縺吶k縲√◎繧薙↑縺薙l縺セ縺ァ縺ィ蜷後§謇区ウ輔〒縺ゅk縺ェ繧峨 ∝ー代↑縺上→繧ゆクス樔ケ晉ォ 縺ッ襍キ謇ソ霆「邨舌〒縺∴縺ー縲郁サ「縲峨↓蠖薙◆繧玖ィ 闡峨′雋サ繧&繧後k縺ョ縺 繧阪≧縲ら闕峨↓轣ォ繧偵▽縺代k縲ゅΛ繧、繧ソ繝シ縺九i迴セ繧後◆轤弱′謠コ繧後k縲ょスシ縺ッ縲√←繧薙↑蛛牙、ァ縺ェ隱ー縺ォ繧医k縺ゥ縺ョ蟆剰ェャ縺ァ縺ゅ▲縺ヲ繧ゅ √◎縺ョ縲郁サ「縲峨↓蠖薙◆繧矩Κ蛻′螂ス縺阪〒縺ッ縺ェ縺縺 縲ゅ◎繧後縲∝スシ縺悟ー剰ェャ繧定ェュ縺セ縺ェ縺上↑縺」縺溽炊逕ア縺ョ荳 縺、縺ァ繧ゅ≠繧九 ゅ◎縺励※縲郁サ「縲峨↓縺輔@縺九°繧九→蜷梧凾縺ォ蠖シ縺ッ謖∝盾縺励※縺阪◆譁ケ縺ョ謳コ蟶ッ髮サ隧ア繧呈焔縺ォ縺ィ縺」縺ヲ縲√い繝峨Ξ繧ケ蟶ウ繧堤惻繧√k縲りェー縺九↓莨壹♀縺 ゅ◎縺励※謖ソ蜈・縺ョ縺ェ縺そ繝け繧ケ繧偵@繧医≧縲ゅ¥縺 繧峨↑縺 り劒讒九縺 縺九i雖後>縺ェ繧薙□縲ょサカ縲★縺」縺ィ縲郁オキ繝サ謇ソ縲峨′邯壹¢縺ー窶披 泌譎る俣縲∽ク凾髢薙 ∝サカ縲 ∵謦ォ縺玲謦ォ縺輔l邯壹¢繧九%縺ィ縺ォ縲∽セ。蛟、縺後≠繧九縺ォ窶披 斐 親友と、刃物を手渡された彼自身と、中年の転がった男と、三人だけの空間で、長い時間が経過する。

譚ア莠ャ縺ォ謌サ縺」縺ヲ縺九i縲∝スシ縺ッ荳 蠎ヲ繧よア 陲九r縺ァ縺ヲ縺↑縺

ドアが開き、血に濡れた彼が白い室内に一人で現れ、いう。確かに、ダストだ、この世界は、すべて。
眼鏡の男が立ち上がり、坦々とした声で、おめでとう、きみはまたこの世界に存在が許された、祝福の指輪だ、と口にするが、美しい男がそれを制して、いう、論理的なカウンターを新鮮な死者を使って生んだのか、見よう見真似にしてはとてもうまくやり遂げたね、親友の方を殺すなんて。このような場所に連れてくるような者など確かに親友とは呼べないから、そして、さらにべらべらと喋り続ける、愛する、あの女の忌々しい組織に修繕不可能な傷をつけようと偶然を装いきみを招いたが、さぁどうしようか、奥の部屋の律をきみは凌いだが、こちらの部屋の俺たちの律に対して、きみはかわせないだろう。彼は、開けられたままのドアの前で立ち竦んだまま震えている。ダストだ、と吐き棄てる。そうだね、という声、ゴミだ、この世界のものはすべてゴミだ、きみら組織はそれらすべてを暗号と看做し、文字化けのような下らないものまで一要素として扱えるよう技術を企んだ、暗号によって現れる新しい世界では、この世界のすべてのゴミに意味があるという、とてつもなく小賢しいファンタジーさ、きみはそんなおままごと集団の一員だ、だが、俺は事実、この世界を律している。世界を動かす有能な者たちが、表の顔の俺に会いに、日夜現れ、相談を持ちかけてくる。俺の言葉一つで、世界は変わる。きみだって、俺の一言で、存在を抹消されたことで、結果、一人の人間を殺したのさ。きみはクズだ、美しく笑い、いう、刃物を拾ってきて、自らさらっと死ぬといい。
縺▽縺セ縺ァ繧らカ壹″縺昴≧縺ェ荳也阜縺 縺」縺溘 √□縺梧サ縺九¢縺ヲ縺k縺ィ縺≧蝎ゅ′縺溘▽繧医≧縺ォ縺ェ縺」縺溘 √◎繧後r縲∝スシ繧峨鮠サ縺ァ隨代▲縺溘 ∽ソコ縺ッ螳溘縺ィ縺薙m縲∵サ⊂縺′貊縺ェ縺九m縺′闊亥袖縺ェ縺 ∽コ梧凾髢薙譏 蜒上↑繧峨 √◎縺ョ莠梧凾髢薙′縺阪◆縺ィ縺薙m縺ァ繧ィ繝ウ繝峨Ο繝シ繝ォ縺梧オ√l縺ヲ豁「縺セ繧九□縺代□縲√◎縺励※縲∝宛菴懆 縺セ縺滉シシ縺溘h縺↑繝昴Ν繝弱げ繝ゥ繝輔ぅ繧剃ス懊▲縺ヲ豬 壹&縺帙k縲 永遠のごとき数秒
人を殺めた、生きる資格などない、確かに、それでも、アリスは、児島香、あの女は、NNNNの元で、俺を受け入れるはずだ。あの女も、俺たちも、この組織のことをまるで知らなかった、敵対構造をはっきりと作らなければならない、今、俺が生き残るために、そして、この室内の律は、不充分だ、なぜなら、この男は、あの女を愛している。やがて、目の前の二人に一度ずつ視線をやり、俺は、という、きみたちの組織にこの命を差しださないために親友を殺した、次に、今度は、この命を失わないために我が組織の命を差しだす。知りたいだろ、俺たちの組織を、構成を、技術を。
美しい男がいう、宣戦布告か、面白い、どうせ俺たちが勝つんだから、受けてやるよ。
螟ァ讖区ュ」蜥後縲√°縺、縺ヲ豎溷哨逕ア蟶後→蜻シ縺ー繧後※縺◆荳 莠コ縺 縺」縺溘′縲√≠縺ョ縺ィ縺阪 √i繧後※縺上k蟆剰ェャ繧定ェュ縺ソ縲√◎縺薙↓謠上°繧後※縺◆繝。繝そ繝シ繧ク繧呈アイ縺ソ縺ィ繧九∋縺阪°繧ゅ@繧後↑縺→菴募コヲ繧よ 昴>縺九¢縺ヲ縺ッ縲∽コ、謠帛庄閭ス縺ェ髢「菫よ ァ繧定ヲ九▽縺第э蜻ウ縺ェ縺肴 ァ縺ョ蜿ェ荳ュ縺ォ貍ゅ▲縺ヲ縺◆縺 繧阪≧縲ゅ>縺セ縺ッ蟆剰ェャ鄒、繧よ焔蜈↓縺ェ縺上 √◎繧後r騾√▲縺溘→諤昴@縺堺ス戊 °縺九i縺ョ騾」邨。繧ょョ悟縺ォ騾皮オカ縺医※縺k縲

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I don窶冲 give a hang.
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BRETHREN, I SPEAK AFTER THE MANNER OF MAN; THOUGH IT BE BUT A MAN窶儡 COVENANT, YET IF IT BE CONFIRMED, NO MAN DISANNULLETH, OR ADDETH THERTO.
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- Galatians 3:15

青年が去った組織は、再会したあの男の口から崩壊を告げられ、それで青年はあの女への未練に囚われただろう。話に聞いた白い室内はその事件のあと棄てられたため、敵対組織の行方も分からないと聞く。背景に何があったのか、青年には全貌の欠片も分からない。ただ絶望が覆い、青年は何度も女の幻影を視、そのままビリヤード台と衝突し、ふわっと宙に浮いて、くるくると回転し、台の外の闇に落ち、消える。自らの喉に刃物を突き刺し、血が、壁や、床へ、絶命ケエ縺ッ繧キ繝」繝ッ繝シ繝倥ャ繝峨°繧峨°繧峨□縺ク縺ィ豬√l繧区ケッ繧貞繧願」ゅ¥繧医≧縺ォ縲∵э隴倥r繝弱繧キ繧ケ縺ォ鄂ョ縺上 ゅb縺ッ繧縺ヲ縺願遶九※縺梧紛縺」縺ヲ縺k縲りェー縺九′谺。蜈謇峨r髢九″縲∝、壹¥縺ョ閠◆縺。縺ョ譚溘′縲搨蟷エ縺ョ蜑オ縺」縺溘す繧ク繝ォ縺ォ鬲碑。薙r遘倥a縺溪 補 募魂縺ッ蛛カ辟カ縺ォ繧ょス「閠御ク翫′蠖謎ク也阜縺ク關ス縺ィ縺吝スア縺ィ縺ェ繧翫 ∝ョ、蜀r隕≧繧ソ繧、繝ォ縺ィ邨舌縺、縺上%縺ィ縺ァ遒コ螳溘↑繧ゅ縺ィ縺ェ縺」縺溪 補 墓腐縺ォ縲搨蟷エ縺ッ蜈ィ縺ヲ繧堤┌蜉ケ縺ォ縺吶k縺薙→縺後〒縺阪k縲ゅ◎繧後縺吶〒縺ォ逕溘∪繧後↑縺後i縺ォ縺励※辟。縺ィ縺ィ繧ゅ↓縺ゅ▲縺溘縺 縲る搨蟷エ縺ッ螟壹¥縺ョ逕溯エ莉」繧上j縺ォ閾ェ繧峨鬲ゅr謐ァ縺偵 ∝セ九@縺溘縺 縲∽ク也阜繧偵 ゅ@縺九@縲る搨蟷エ縺ッ縺薙%縺ァ蟷シ蟆第凾縺ョ險俶縺ォ蝗壹o繧後k縲よキキ豐後螟懈縺代□縲ゅ◎繧後閾ェ繧峨蜀↓縺ゅj縲√◎縺ョ闃ア繧帝幕縺◆荳ュ縺ォ縺ッ陦 縺梧クヲ蟾サ縺※縺◆窶補 暮 」縺ェ繧玖。 譌上閨匁嶌縺ョ蜈↓縺ゅj縲寔邏&繧後k險伜捷縺ッ繧ソ繧ヲ蜊∝ュ励□縲りサ玖ス「縺瑚サ玖ス「繧堤函縺ソ縲∵・ュ縺ッ讌ュ繧貞他縺ウ縲搨蟷エ縺檎肇螢ー繧偵≠縺偵◆縺ィ縺阪↓縺ッ縺吶〒縺ォ螟懈縺代′蟋九∪縺」縺ヲ縺◆縺 繧阪≧縲り埋縺搨濶イ繧偵@縺溽ゥコ縲ゅd縺後※逾也宛縺ョ譖ク譁弱〒螟壹¥縺ョ譎ゅr雋サ繧☆縲よ焚螟壹¥縺ョ遖∵妙縺ョ譖ク迚ゥ縺後◎縺薙↓縺ッ逵 縺」縺ヲ縺k縲ょ慍逅о縺ッ鮟偵¥蝪励j貎ー縺輔l縲∝譁ケ縺ク縺ィ莨ク縺ウ繧玖オ、縺泙蜊ー縺ォ繧医▲縺ヲ譌ゥ縺上b辟。蜉ケ縺ィ縺輔l繧九 る搨蟷エ縺ッ縲∽ス募コヲ繧よュサ繧呈悍縺ソ縲∝ケセ蠎ヲ繧ゅ≠繧峨°縺倥a螟ア繧上l縺溽函蜻ス繧呈ク悍縺吶k縲よ凾繧堤オ後※譟ソ譛ャ證∝ュ舌→隕ェ縺励¥縺ェ繧九 ゆサ翫隕九k蠖ア繧ゅ↑縺 晄丼譛溘譏弱k縺・ウ縺ィ縲√◎縺ョ蛛エ縺ォ縺k蠖シ螂ウ縺ョ螯ケ縺ィ縲ょ辟カ螯ケ縺ョ譁ケ縺ォ蜃コ莨壹>縲∵噤蟄舌→蜀堺シ壹@縲∝スシ螂ウ縺ォ縺ッ縺▲縺溘>菴輔′縺ゅ▲縺溘縺 繧阪≧縲√◎繧後〒繧ゆス輔°蜉帙↓縺ェ繧阪≧縺ィ蜿」縺ォ縺励◆縺ッ縺壹□縲∽サ翫蛻・螳、縺ァ逵 縺」縺ヲ縺k縲ゅヮ繝シ繧キ繧ケ縺ョ蜈〒縲√%繧後辟。蜉ケ縺ィ縺輔l繧九 ゅb縺ー代@豁ウ繧堤オ後※縲∫ァ伜ッオ千、セ縺ォ謇 螻槭@縺溘□繧阪≧縲るュ鴨逧↑螂ウ繧偵◎縺ョ諱倶ココ縺梧髪縺医k縺薙→縺ァ蠖鍋樟螳溘◎縺ョ繧ゅ縺ォ蛻・谺。蜈r驥阪蜷医o縺帙k謚 陦薙r騾イ繧√※縺◆縺 繧阪≧縲ゅ◎縺励※縲∝ッセ遶狗オケ斐→縺ョ蠖「閠御ク九〒縺ョ謚嶺コ峨′遘伜ッ」上↓蟋九∪縺」縺ヲ縺◆縺ィ縺≧縺薙→縺檎オケ斐隗」菴薙→縺ィ繧ゅ↓遏・繧峨&繧後 √≠繧九→縺埼搨蟷エ縺ッ遒コ縺九↓蜃コ莨壹>縲√◎縺励※騾£縺溘縺 縲∵$繧阪@縺譚・莠九□縺後 √%繧後b繝弱繧キ繧ケ縺ョ蜈〒縲∫┌蜉ケ縺ィ縺輔l繧九 ゅd縺後※縺ゅk螂ウ縺ォ諱九@縺溘□繧阪≧縲ゅ◎繧後繝薙Μ繝、繝シ繝我ク翫〒髱貞ケエ縺ョ豁サ繧偵b縺溘i縺吶′縲√%繧後b繝弱繧キ繧ケ縺ョ蜈〒縲∫┌蜉ケ縺ィ縺輔l繧九 ゅ◎縺励※貊縺九¢縺ヲ縺k荳也阜縺ァ菴懷ョカ縺ィ遏・繧翫≠縺 ∝鴨繧堤畑縺※譎らゥコ繧偵→繧ゅ↓雜翫∴繧九 ゅ◎縺薙〒縺ッ譌ァ蜿句ァ牙ヲケ縺ィ蜀堺シ壹@縲∽ス戊 °縲∫塙縺ィ蜃コ莨壹▲縺溘□繧阪≧縲ゅ%繧後°繧我ス輔°縺悟ァ九∪繧倶コ域─縺後☆繧九 ゅ%繧後b繝弱繧キ繧ケ縺ョ蜈〒縲∫┌蜉ケ縺ィ縺輔l繧九 ょ、壹¥縺ョ縲∬レ譎ッ繧呈戟縺」縺滉ココ迚ゥ縺溘■縺ィ邨舌縺、縺阪 ∬繧峨縺∪縺 隕九∴縺ェ縺レ譎ッ繧偵b蜷ォ繧√※縲√∪繧九〒豌励↓縺ェ繧九%縺ィ繧ゅ↑縺上 ∫悄遨コ縺ョ諢丞ソ励〒縲∫┌蜉ケ縺ィ縺輔l繧九 ゅ☆縺ケ縺ヲ縲∫┌蜉ケ縲ゅ◎縺励※縲∫悄螳溘□縲る搨蟷エ縺ッ縲∫悄螳溘∈縺ィ縲∵羅遶九▽縲ゅ@縺九@縲ゆス戊 °縺梧桾蜈↓迴セ繧後◆縺ョ縺 縲ゅす繝」繝ッ繝シ縺九i貉ッ縺後ヰ繧ケ繧ソ繝悶∈豬√l關ス縺。縺ヲ縺¥髻ウ縺悟セ舌 ↓閨槭%縺医※縺上k縲よャ。隨ャ縺ォ縲∝、ァ縺阪¥縲ゅh繧翫 ∝、ァ縺阪¥縲ら樟繧後◆蠖シ縺ィ縺▲縺溘>菴輔r隧ア縺励◆縺 繧阪≧縲ゅ↑縺ォ縺九 ∵э蜻ウ縺ョ蛻°繧峨↑縺錐蜑阪r蜿」縺ォ縺励 ∝盾蜉 繧貞匡繧√i繧後◆縺ョ縺 縲ゅΑ繝ゥ繝シ繝懊繧、繧コ溘 螟ア謨励□縲∝臓縺上 ゅ◎繧後r縺ゥ縺ョ繧医≧縺ォ縺励※辟。蜉ケ蛹悶☆繧後縺>縺ョ縺九 ∫ェ√″蛻コ縺帙↑縺 よ欠縺ィ謖→縺ョ髢薙〒菴募コヲ繧ゅリ繧、繝輔′繝繝悶Ν縺ィ縺ョ髻ウ繧堤ォ九※繧九縺九j縺ァ荳 蜷代↓魄ョ陦 縺瑚繧上↑縺∪縺セ縲√Μ繝溘ャ繝医↓驕斐@縺溘°縺ョ繧医≧縺ェ縲∬頂豌励′縲√Θ繝九ャ繝医ヰ繧ケ縺ョ蜈ィ菴薙r隕▲縺ヲ縺k縲る搨蟷エ縺ッ縺昴l縺ァ縲∽コ帷エー縺 縺」縺溘縺壹縺薙→縺輔∴繧よー励↓縺ェ繧雁ァ九a繧九 ゆス懷ョカ縺ョ縺◆谺。蜈〒縺ッ縺ゥ縺ョ繧医≧縺ェ莠区縺ョ蜈〒蝨ー逅サコ。縺ク豁ッ霆翫′蝗槭▲縺溘縺九 ゆサ翫>繧九%縺ョ荳也阜縺ァ轣ォ譟ア縺ィ縺ィ繧ゅ↓雜ォ伜ア、蟒コ騾 迚ゥ縺御ク 螟懊↓縺励※迴セ繧後 √∪縺溘@縺ヲ繧ょ、ゥ菴ソ縺梧険繧雁ァ九a縺溘→縺ッ縺ゥ縺>縺%縺ィ縺九 よ焚蛻セ後 搨蟷エ縺ッ繝舌せ繧ソ繧ェ繝ォ縺ァ縺九i縺 繧呈強縺※蜈>縺滄Κ螻九↓蟶ー繧翫 √さ繝ウ繧サ繝ウ繝医↓霑代▼縺上 よ涸譛ャ證∝ュ舌′莉・蜑堺サ穂コ狗畑縺ォ謖√▲縺ヲ縺◆繧ケ繝槭繝医ヵ繧ゥ繝ウ繧貞 溘j縺ヲ縺◆縺ッ縺壹□縲√→險俶繧貞叙繧頑綾縺励 ∬蜉帙〒謇 譛画ク医i縺励>菴懷ョカ縺ョ逡ェ蜿キ繧偵繝す繝・縺鈴 夊ゥア縺吶k縲ゅ□縺後 ∽ス懷ョカ縺後>縺 √◎縺ョ縺薙→縺ッ譚・蟷エ蛻願。後&繧後k譛ャ縺ョ縺ェ縺九〒繝輔ぅ繧ッ繧キ繝ァ繝ウ縺ィ縺励※險倥@縺ヲ縺k縺九i莉翫隧ア縺帙↑縺 √→縲ゅ◎繧薙↑縲√″縺ソ繧呈舞縺」縺溘繧貞ソ倥l縺溘縺九 ょソ倥l繧具シ溪 補 輔″縺ソ縺薙◎蠢倥l縺ヲ縺ェ縺°縲√ョ繧、繧ケ繝ぅ繝け繝サ繧ェ繝シ繧オ繝シ縲∽ココ鬘槭諢壹°縺ェ縺ョ縺輔 ∝卸騾 荳サ縺後>縺」縺溘>縺ェ縺應ス懊i繧後◆繧ゅ縺ォ縺セ縺ァ蠖ア髻ソ繧貞所縺シ縺帙k縺ィ菫。縺伜セ励k繧薙□




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青年の前のテーブルに、蛇が象られた指輪が置かれる。
指輪、と青年が呟く。
作家の男が、黒真珠のような瞳で青年を見、改めていうが、俺は理神論の立場をとっている、と口にする。その世界で住まう人々が、汎神論であろうが有神論であろうが、無神論であろうが、その他の何かであろうが、信仰を得るのは自由だ。だから、その範囲内で悪魔という概念が現れても不思議じゃない。それで、きみは魂を売ったのか。なにを意味する?
世界は、青年がいう、予め、ダストだ、すべて。それを信仰は回避できない。ゆえに、従属し、生贄を捧げ続けなければならない。そういうことさ。
生贄とともにある技術か。きみは、より上のステージへ行くため、誰かを殺すつもりか。
無言。
作家が、初めて青年に会ったときのことを思いだす。予め?
そう、物心ついたとき、すでに世界をそう視ていた。エラーだ。紙に8x8の格子を記す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その真上に、ミニチュアの球体が浮かぶ。それが天地貫く直線と化し、紙ごと燃え、灰から塵へ、消えてしまう。生まれ落ちた、それ自体が間違いだった、だから、俺はケイオスに賭けた、やがて、別の考え方を持って集まる組織に出会い、首謀者と知らず女に恋した、その女は自らのエラーで世界を司る恐ろしい男と何らかの関係に堕ちていて、組織は結果解体した、本当の希望が断たれたんだ、だが、俺は死ねなかった、第三ともいえる考えを持つ者と時空上で接続し、こういう力を持ち、きみと出会い、今も、こうして生きている、俺は、ケイオトだったのさ。
その力で何をする?
何度も考えを上書きし続けた。青年が、涼しい顔をする。結論は、散った仲間たちを集め、組織を再生させ、噂に聞いたあの男に復讐するんだ。

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二度にわたり溜め込まれていた文字化け群が、ここで途切れる。


どうして、世界は滅ぼうとしていたのか、と作家の男が思う、ここへ来る、半年ほど前だ、人類は賭けにでた、闇黒資源を超えるために。ずっと昔、資源は尽きかけていたが、その勢いは人類の労力を越え、一つの延命策が選ばれた、太陽が光を放ち、月が闇を発していた現象と連動した技術、資源を光とするなら、存在しない闇の資源を仮想し借りる技術だ、だが、闇黒資源は留まることなく増え続け、太陽は冷たくなり始めた、最早世界は滅亡しかない、そこで選ばれた賭けが、不確定性原理だ、世界は、そもそも粒子であり、波である、ゆえに、この世界を片側と定め、正逆の片側を出現させれば、その世界は太陽が強く月の弱い世界だ、そして、もう一度それらを一つの世界へと定着できたなら、強い太陽と弱い太陽、弱い月と強い月、同等の月と太陽に戻るだろう、この天体に関連している限り、闇黒資源もまたリセットされる、人類は、そこからやり直せるはずだ、その賭けのもと、世界は一丸となり、半年の期間を設け、およそ、人類史上初だろう美しい戦いに挑んだ、そして、失敗したのだ、太陽も、月も、二つとなり、闇黒資源は確かに一度なくなったが、その増加量は倍になった、肌でわかるほど急速に太陽は冷え始め、人類は最後のカードを切ったばかりだ、何の手もなく、滅亡まで僅かだということが数値で示された、皆、世界が一丸となった美しい戦いに歓喜していたぶん絶望も深く、俺は、ただ、ずっと創造を続けていた、ただ、ひたすらに。

すべての出版社が倒産してしまってからさえ、より力強く。


九つの流れる光を残す。

創造された世界はその法則により無限に拡散し移ろう。



とある休日、風が強い。
中目黒の緑溢れるカフェ&ビストロで、作家の男と柿本紗月がランチをとっている。涼し気な和調の色彩をした花柄ロング丈ガウンの下に、シンプルな白のトップスと、細身のデニムパンツ。さり気なくデコレーションされたスマートフォンを片手に、もうすぐお姉ちゃん来るって、といい、大橋くんから聞いたよ。例のハワイの、別荘にするんでしょ。素敵じゃん。
ああ、先日電話がかかってきてね、とても事務的な会話をした。彼とはもう、それだけの関係だ。
先生、さみしそう。未有くんも旅立っちゃったし。私、大橋くんと一緒にいて先生と出会って未有くんとも話して、一つ分かったことがあるんだ。男は、みんな、何かで有ろうとする。どうして? 私は夢を追って生きてる自信はない。だから、私に似た大橋くんに興味を持ったけど、しばらく一緒にいて気づいたの。彼は、違った。彼は、夢を追わないスタイルで有ろうとしてるの。どうして男は自らすすんでがんじがらめになろうとするの。
きっときみがそういう男に興味があるんだろう。
え、前提崩壊じゃん、そんなこと言われたら。ねぇ、一つ聞いていい? こないだ教えてくれた女編集者さんとはどんな関係になってるの? 気にしてたんだ。
作家が、良いタイミングで葉月さん到着だ、という。随分、垢抜けてきたな。
やめてください先生、と葉月が怯えたような目で周囲を見渡し、紗月の横に座る。三本の縦の白いラインが入った肩から肘までの袖がシースルーになっている黒のワンピースは腰より下辺りが波打つスカート状、前面に大きく細いアルファベットはドットのアクセントが効いている。靴下はボーダーで白く頑丈そうなシューズ、髪は波打つカプチーノブラウンのミディアム、片手に水筒のような黒いバッグと白い無地のキャップを持っている。そして、そわそわとしながらメニュー片手に店員に注文。
未有の話だが、印象に残ることを何か言ってなかったか?
テーブルに置かれた紫蘇ジントニックを見つめながら、過去、死ぬ間際まで、ある人を想ってたんだって。彼に泊まらせてあげてた部屋をノックして荷造りの調子を見に行ったら、私の方を向いて、それから打ち明けてきたの。〈俺は、あの作家と違って一言一句言葉を記憶してるわけじゃない、ときには、とても大事なことまで不明瞭になることもある〉未有くんが想ってた女についてね、魂を売った過去があるんじゃないか、そんなふうに疑っていたって。でも、違うの。その人は、売ることなく生きる形を模索し仲間を集めてたの。その組織に所属していたにも拘らず、自らの記憶が事実を覆い隠してたって、そのことに気がついたんだ、って。
紗月が、ノンアルコールビールを口にして、じっと姉を見つめている。
話が続く。旅立つ理由はもう一度その人を見つけて組織を再生したいんだって。そこでは、魂を売ってしまった自分も生きられる筈だって。でも、生きることというのは、存在が第三者に委ねられないことだって、自分の手で、因縁を、終わらせるつもりだってことは理解できた。
作家がいう、小説でよくある形式、主人公とは別に、語り手がいる。主人公を見失った語り手のような思いだ。
お姉ちゃん……、紗月がなにか言おうとし沈黙を作る。
首にかけてるそれ、きれい、と葉月が作家のチョーカーに視線をやる。
ああ、これはミラーボーイズってブランドのアイテムだ。ネットで簡単に手に入る。ちょっと高いけどね、カウンターマジックの効果が込められている。
カウンター、何? 紗月が動揺する。
合気道みたいなもんさ。攻撃した側は、その力で反撃される。
低い声で、お姉ちゃん、と紗月がマニキュアを塗りながらいう、私、大橋くんのこと好きかも。
なに突然? 恋のことは紗月の方が先輩でしょ。私、ろくな恋してこなかったんだから。
二人の会話を記憶に入れながら聞き流しつつ、作家の男が、さっき聞いた未有の話を頭で再生させて、思う、組織の再生か、すでに十年経ってると聞いていたが。
でも、大橋くんとは本気ではつきあえない! 紗月が大声を出す。
作家が紗月を見る。
葉月が、今、すっごいおしゃれなとこにいるんだから、恥ずかしいって。と、とても嫌そうな目で妹を見る。
作家が四つの指輪をはめた手でグラスをつかみ、いう。きみたちと食事をするのは愉しい。度々ここで食事をしようじゃないか。


物語が突然去っていってしまった感情を比喩化した描写に、去りきれなかった部分、作家に関する物語を意味する残照が、文字化けなどをベースにしたランダムな文字列群が代入される代わりに入り交じる――帰宅途上らしきスーツ姿の男たちが主に歩いている駅構内、地味めのストリートファッションをした若者、ベビーカーを押す若い女性、それから、たった一人だけホームから人が降りてきた階段を上ると、人数を数えるのは億劫とはいえ混雑ほどではない程度の数の人々が電車を待っていて、土地柄か、落ち着いた色彩の服を皆身にまとっている。放送が重なり電車が到着し幾らかが乗り込み、反対側に到着した電車に多くが乗り込む。坦々と。マスクをした学生、腕時計を覗き込む会社員、電車内はともにすいているため皆座れるが、立つ者もいる。片や、電車がゆっくりと走り去っていく。どちらにも乗らず次の電車を待つ人たちと並び、去った電車のあと視界に飛び込んできたのは、硬さのある殺風景な建物と、背の低いビルディングが混じる建造物に挟まれた大きな舗道、途切れ途切れに車の走る車道、そのような、人工的大地。狭い空に、月が四つ、輝いている。背後では、階段を上ってホームへやってきた人々の数が増えていって、先に到着した方の電車は待機している。稀に白人の姿。大多数の待つ者たちがスマートフォンを眺めている。やがて、やってきた電車に乗り込む。

一人、作家の男が歩いている。

事務所に戻ってきたとき、玄関で、突然甲高い音とともに、首元のチョーカーに小さな亀裂が入る。こめかみから冷たい汗が一筋垂れて、指先をチョーカーにやり、深い溜め息は飲み込んで、葉月がいっていた話を思いだす。未有がまさに葉月の住む部屋の玄関から外へでようとしたとき、俺が復讐するつもりでいる男の側には、その男によって江口由希と名づけられた男がいる、眼鏡をかけてキーボードを叩き続けている秘書のような男、対抗組織の中核は、一人ではなく、無限大の記号のように歪んでいる、それを、作家の彼に伝えておいてほしい、と、そのような。さらに、チョーカーに亀裂が入る。先のとは違う箇所に。作家は、思う。相当高価なやつを俺は相当安く買ったようだ、俺の物語はこの先にはない、あの姉妹を、危機に晒すわけにもいかない、と思う。



鈍い銀色、ゆらぎのない外壁が、久遠のごとく。遠目から眺めれば、漆黒。完全な平面。その角から、地平線の先まで伸びる。見上げれば、遥か彼方まで。約十万光年の直径を持つ銀河系が持つ約二千億の恒星の一つ太陽から三番目に位置する惑星地球、その表面積約十%を占める5492万9000平方キロメートルのユーラシア大陸最東にある日本列島の西、大阪の中央部を走る環状線外側の東に一夜で聳え立った超高層建造物の外壁の素材はいまだに解明されていない。地球上にある物質ではなく如何なる手段をもってしても透視できない。鈍い銀色で繋ぎ目なく欠片すら破壊できない。そもそも素材ではないという研究者の声が多数あり、一切メディアで特集が組まれることはない。それは地中深く地球のコアまで突き刺さるようにしてあり、天高くその末端は大気圏を越え宇宙空間に触れる。かつて旧約聖書では、ノアの息子たちが団結し、人々が散らないよう天を凌駕するバベルの塔建設に挑んだだろう。神はその阻止のため、人々の言語を複数に変えたのだ。もしこの寓話が真であるなら、確かな人工物の姿を持った超高層建造物の発生は、神の力が届かなかったことを指すだろう。そのため、理神論の塔と呼ぶ者たちが現れる。グノーシスでも変わらない。偽の神のもとにいた人間に知恵を与えたのが蛇のかたちをとった神であり、その人間の末裔たちはばらばらに話されてしまった言語の統一のため絶対的なバベルの塔建設に挑みやがて偽の神の阻止を受けただろう。ならば、超高層建造物というバベルの完成をもって神となった人間はそれでも言語の統一に失敗したと見られる。やはり神に、力などないということだ。こういった視点はあくまで周縁の想像にすぎない。一夜にしてなぜ現れたのか、その内部でなにが行われているのか、一切知ることのできない人々は、想像を弄ぶ。

薄いアクアのカラーコンタクトが入った瞳に、雲を突き抜けて天高く聳え立つ建造物が映っている。柿本紗月は、初めてきた大阪のバケーションホテルのバルコニーの手すりに寄りかかって、光景に釘付けになっている。作家の男が、このホテルは観光用にアレンジされたらしい、階数は増え、北側の壁はあの建造物を堪能できるよう可能な限りガラス張りにされ、ホテル北西の角に位置するこの部屋は、建造物の長い影が心斎橋運河とクロスし大阪湾へずっと伸びていく情景が楽しめるようテラスさえ設けられた、系列のホテルは大阪に数多くあるのに一切ホームページがない、建造物の出現とともにたくさんの人間が家屋ごと呑み込まれたというのに非情な経営スタイルだな。ところで、着いてそうそう申し訳ない、ルームサービスで珈琲を頼もう、きみが泊まる部屋の案内はもう少し待っていてほしい。女が、夢から醒めたかのごとく振り向き、じっと男の瞳を見る。そして、いいよ、私、先生とお話するの好きだし。それから、コールしに部屋へ戻っていく作家の背中を見ていう、先生にとってこの超高層建造物は、過去と未来の狭間を繋ぐ象徴なんでしょ。風が強く、涼しさが沈黙を通過する。バルコニーに戻ってきた男がデータを読み込んだ機械のようにいう、〈きみは異星人か何か、この世界の住人ではないんだな、面倒臭いからそういうことでいいだろう、きみは太陽と月が二つずつ浮かんでいることに驚きを得ただろ。……異星人という言い方は失礼だった、異邦人だ〉それが、はじめの頃に未有に向けていった俺自身の言葉だ、面白いだろ、この空の上にはもうじき四つの月が現れる、俺の方が今は異邦人で、このことを話せる人間はもうきみしかいない、故郷ともいえるかつての次元に未練があるわけじゃない、だが、きみのいう通りだ、長い夢を見ていただけだったんじゃないか、俺は、夢を語っているだけなんじゃないか、そういった記憶への懐疑を、この超高層建造物はたやすくぶち壊す、それを、どうしてもきみと一度見たかった、見なければならなかった、俺が次元を越えてここへやってこれたのは、この建造物を創造した男による技術だからね。女が、哀悼と変わらない視線をやる。先生は、すべての言葉を正確に記憶してるのに、それらをすべて疑うこともあるのね。男が、建造物を眺めていう。自然物のように、強固だ、これが、創造の、具現化だ。

疑ったことはないだろう、岩が、海が、天候が、誰かの手によるものだ、などと。
でも、違うんでしょ。
そう、いいね、きみと会えて良かった、俺は理神論者だ、創造主がいるのさ、この俺のような、ね。
理解はできない、でも、先生はそう。
世界が滅ぶといわれている間も、ずっと小説を作っていた、作るためにすべてを組織している、そのように生まれてきたからだ。

女は、作家の男と横並びになって珈琲に口をつけながら、暮れかけてきた空を貫く超高層建造物を見上げる。ずっと、空の彼方へ、点になるまで、果てしなく伸びている。それから、男女見境なく日夜遊び続ける大橋正和のことを思いだす。横にいるのは、作ることしか考えていない作家、折原輝弥だ。この二人の狭間で、私の居場所はどこにあるんだろう。バルコニーにある円形テーブルの前に脚を組んで座り、ジップ切り替えのボストンバッグからマニキュアを取りだし、悪くない、と思う。その二人の狭間のすべてが自由に使える居場所のように思えてきたからだ。とても気楽で、安心する。永遠ではないのは確かだが、そもそも女は恋を知らない。まだ、知らない、のではない。ずっと知らないまま生きていくのかもしれない、と女は思う。
涼しい、
と女がいい、作家が振り向く。私、お姉ちゃんのことばかり考えてたとき、私も、男運が悪いのかもって思いかけてた、でも、今は、良い男たちに囲まれて幸せって思う。お姉ちゃんもさ立ち直ってきてるし、すっごい気楽。ねぇ先生、一旦ここを出て、あの建物、もっと近くから見にいこ。触りたい。どんな感じなのか知りたい。せっかく大阪きたんだし、道頓堀とか行きたい。ね、行こ。と言い終わらないまま室内へ戻って支度をはじめだす。作家の男は呆然としていたが、すぐあとを追う。首には、二つの小さな亀裂が入ったチョーカーが光っている。

ホテルの室内は、ベージュのL字型ソファがあり、優しい色彩をしたトライバルのラグの上に黒い幾何学的なテーブル。片隅には、観葉植物が置かれてある。

男の指に嵌められた九つの指輪のうち八つがかつての次元からからだとともに運ばれてきたものであり、一つは、受け渡されたスターリングシルバーだ。そして作家の背後で超高層建造物が聳え立っている。作家の表情はつねに険しい。だが、なにかが落ちて弾け飛んだ音がしたのを聴いて、女が窓の外を指差していう。見て、噂で聞いてた、天使たちの雨! それで、振り返った男の視界に、数多くの羽根が生えた白い人型、天使たちが降っている。まるで人形のように魂の抜けた天使が、窓枠で切り取られた暮れかけている空を、建造物を背景に次から次へと落下している。女が再びバルコニーへ出て身を乗り出し、地面を覗き込む。そこでは、落ちて液状になって弾け飛んだ天使の白い残骸が、どろどろと大地を覆ってしまっている。作家の男は、ゆっくりとバルコニーへ歩むと、女の肩を抱き、天使の降りゆく様を瞬きせず自らの眼球に映す。すごいな、想像以上の光景だ。

上空にまで靄が漂い、女が、幻想的、傘で凌げるの、という。

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