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creativitation 

ところで、

それがカットアップ――第1の原理――フラッシュバック――悪夢、現実、点灯――

ところで―― 

雨が降りしきる闇夜の堂島。 

車のフラッシュが溶ける。瞳を覆いつくし、眩しい。

 a.m.11 

極限状態の上、崩れかけている建物のあいだを走って、ティーンエイジのタイ人をいっさい気にせず、俺はグレアムの住む場所を襲う。太陽のもと、足早に、堂々と――からっと晴れた天候――そうやって、東京にいた記憶を破りとってしまったらしい。それで、そのうち、袋詰めのバンドエードを見て、留守電メッセージの入った携帯――11:55――わざわざそこから、グレアムの部屋を解読し、今はそれの――携帯の――燃えるさまを見ている。ビタミンB12を、ミネラルウォーターを、遠くで、野犬の鳴く声。喉が乾き、車に戻り、硬球を探していたとき、俺に向け、言葉が放り投げられる。目を閉じて、月明かりとノートパソコンと――どこかをボンネットが反射しているらしい。あらゆる地下駐車場での記憶が急速に回転し、翻弄している回転が次元を荒らげ、爆弾を思いだしている。薬局で爆弾を見ていたと思う。コンビニエンスストアの近くの薬局で、四つの音がうねるよう。闇と地続きであるかのように流れる音の核で、俺は昔の恋人のことを見ていたかもしれない。徐々に慣れてくる目、背後、動く男の影―― 

―――― 

――
......とった
〈それよ〉 ......された......とっていたけれど、...... 

そのあとの記憶。マイクオールドフィールドのオリジナルテープを買う。それが理由で混乱した頭のなかで、刺激されるがまま、エネルギー補給の場所の見当もつかず、ずいぶん経っている2つの記憶が交差し、ストリートで、コンビニエンスストアに連れこまれる。店員の大声! 燃やすって携帯で連絡、アメリカ人の中核派テロ部隊の圧倒的な爆弾の連鎖。コンビニエンスストアのすぐあとで、確か、再び、モータープールに舞い戻り、2年前にグレアムが、 (オレはヤツらのコミュニケーションを解読してたんだよ――カリフォルニア州で、直射日光を、一切浴びずに......〉 

さらに数時間前の記憶を感じる。 

〈とりあえず、2日前と同じように店を襲い、肉でも食べようか。オレのお楽しみだ〉 

9月3日午前11時。 

...... 〈さっきね〉 ...... 

途中で、バスで、ビルフリーゼルを聴きながら、目を閉じている脇で乗車料金のふりをして、目を買う。もう一度、唾を飲み込んで、窓の外の明るみを確認した上で、昼食。落ち着き、ジャズパッセンジャーズを聴きながら電話帳から場所の見当をつける。こうしている間にも隣の席を眺めながらオセアニアの時を思いだしてしまう。その騒音の層と9月のからっと晴れた天候のもと駆け乗って、仮眠。そうやってHを置いてけぼりにし、そのすぐあとの記憶――騒々しくバスに乗った2人が会話もせず――座席に腰かけ。ティーンエイジの2人。 

〈車のなかでこれらのこと、する?〉
とH。
〈どうも違う〉 

狙った一人を興奮させる香りが振り巻かれ、その影を、赤い舌で舐めながら、徐々に慣れてくる、それに携わる。

――脱いで。 

――タオルでからだを......
――入った。
息。痛み。
――今感じるよ。
――そんなもんだよ。そろそろ寝なくちゃ辛いだろ。
――委ね続けていたい。襲って。

この男がいったのを見つめながら、Hのからだに乗って、内側からも打ちこみ、快楽を送る。そっと手を伸ばし、頬と唇を撫で、突き動かされている2つの交差に気づく。直射日光。遠くの会話になんとなく、足を簡単に作れてしまえるすばらしい才能を見て、数十個のカロリーメイトを飲む。生活資金調達のメドもつけられたオレはEを襲ったときにも同じように嫉妬してる。 

雨が降る夜。シャワーの音。ゲストハウスのなかで、
〈でも行かなくちゃならない〉 

とHにいわれる。

少なくともそのとき、四日間、11才の日本人、Hのからだを買っていて、確か、まだ11時間ある。

Hはラフな格好のまま唇をギュッと閉め、
〈エピソード。さっき、細い足を見てたと思うんだ〉
そういってくる。


〈もはやキミなんてただ闇しか残らないんだ〉 

 

興味ない俺は、上半身裸のままで洗面所の前に行き、そのあと1人で抜きながらやや痺れているその腕を見つめ、まだでていないにもかかわらず、息を飲み込む。どうして少なくとも4日前には――。野犬の声。聞きとれない違和感に吐いて、拭いている。

――空気。昼間。 

午前11時、果て。
もうだいぶきて
そのうち
なか
を閉じている脇で 太陽のもと のどに流し込む 今はそれの――携帯の――燃えるさま
を荒らげて
思いだしている コンビニエンスストアの近くの薬局で重低音がうねり

とそのなかの留守電メッセージの入って言葉 

を見て遠くで野犬の鳴く声が聞こえる

からっと晴れた天候。10日目。 

3人組がグレアムを、俺の見てる前で車に連れこんで、それからマイクオールドフィールドのオリジナルテープを買う。俺はコンビニエンスストアに連れこまれる。再びモータープールに舞い戻り、それで......東京に飛び立ったのかもしれないが、車を運転するのは確か――場所をいう。今、あらゆるものの行方がわからない。記憶はいつまでたっても記憶で、ここがカオサンストリートの――あるのはもう――ゲート――そして、バー「アフガン」いったあとEを当然のこととして飲み込み、グレアムと落ちあうはずの場所へ。袋詰めの、バンドエード。傘。隣に2人。ここで安住する選択は存在しない。カリフォルニアで俺自身から遠く離れていたアリスを見つめ、グレアムのことをいう。

 〈今すぐ、解読したグレアムの部屋のツールを思いだして!〉 

――――
―― (オレはヤツらのコミュニケーションを解読してたんだよ――カリフォルニア州で、直射日光を一切浴びずに......〉 

...... 〈現れた言葉をばらして組み直し別の言葉にする作業――まだ以下の塊が手つかずのままでいる――〉 ...... 

〈降りて急いで―〉

 11年前の記憶。

――闇夜をまっ白に反転させる落雷が落ちたのを視る―― 

グレアムは、東京に戻りそれから大阪へ去ったと聞く。追うように日本に戻ってきたが、グレアムを捜すようなことはもうしていない。東京にも寄っていない。

解読を間違えれば、彼や彼女の人生も変わる。俺の人生も変わる。

――ところで――

2009年の11月に偶然、アリスこと、

児島香と再会。

ゴミにまつわる組織の話題はしない。情報集積がまた別のアルゴリズムによって組み替えられようとしている。

ゴーストライター名義で作った売るための小説群を個室でバラして暗号を組み込み別の小説に作りなおしていた記憶、それは生と死の狭間でなされていたはずだ。神山町の喫茶店で児島香が、私は今、この生まれ育った大阪の街で新しい組織を立てている、という。そして、 

【そこは不秩序が連続で続くことで唯一秩序の形を成しそれは永遠だった】 

聞けば、1億何千人と日本人がこの小さな島国にいて70億人近くのヒトがこの地球上に住んでいるとかいわれているがあのときの光景を視た者は数えるほどしかいない。ありとあらゆる人間で渦巻くこの世界にすでにその少数の者たちでさえ散らばってしまっている。夜の喫茶店の窓越しに手を繋いで歩く男たちが通り過ぎていくのが見える。女が、自身の築いた閉鎖的コミュニティに、少し面白い青年がやってきて去っていったと話題にする。新たな紙をだし、そこに、 

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と記す。 時代を超える不変性、

多くの人に伝わる、

つまり、マジョリティ、

ゆえに、魂の共有には限界があり、その限界の光景を視た者同士の冷たい共有。

闇に伸びる0.5mmのラインは死を共有する。

1人の死の重さが、数百万人を引きつける文化の根源だろう。

紙とペンを奪い、記す。 

バンコクで知りあった日本人Hを捜しにいくよ。

あれから11年、だから、22歳、――理想的な年頃だ。 

2人で夜を越える。

俺は、閉鎖的コミュニティの連絡先を握りしめる。 

_underline, 2000, 2009, 2020

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